研究実績の概要 |
本研究の目的は、要介護高齢者を介護する就労可能な女性介護者の身体的、心理的、経済的負担による社会的損失を明らかにすることである。 研究方法は、要介護高齢者を在宅で介護している介護者で就労可能な者を対象とし、自記入式調査票を用いて調査した。調査内容は、介護者、被介護者の属性、介護サービスの利用状況、介護費、医療費、収入、介護時間、Zarit介護負担尺度、POMS短縮版、SOCなどについて調査した。調査期間は、平成24年5月~平成24年12月であった。本研究は、順天堂大学医療看護学部研究等倫理委員会の承認後に実施した(No.24-12)。 研究対象者は、98名の介護者で、年齢は平均54.9歳(標準偏差±7.0)、女性80名(81.6%)であった。就労者は69名(70.4%)、離職者は29名(29.6%)で、離職者では、被介護者の要介護度が、就労者より重度であった。同じく、介護者の年齢が高く、女性の割合が少なかった。離職者は、就労者より介護時間が長く、家族による協力が得られていなかった(p<0.05)。ロジスティック回帰分析では、介護時間、介護者の年齢、訪問看護サービスが、就労と負の関係であるのに対して、家族の介護協力は就労と正の関係があった。また、要介護度は介護時間と有意な相関があった。ホームヘルパーの時給から介護時間を算出した結果、離職者は2,697,009円、就労者は1,818,182円の介護を提供していた。以上より、被介護者の要介護度が重度になると、介護者の介護時間が長くなり離職に至ると考えられた。また、介護者の年齢が若いことおよび家族からの支援は離職を緩和すると推定された。さらに、離職により訪問看護サービスの利用が促進されたと考えられた。 なお、本研究は、就労可能な介護者に限定して対象者を選定したため、女性介護者だけでなく男性介護者も含めて分析した。
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