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2012 年度 実施状況報告書

震災に対応する看護業務継続計画(NSCP)の作成と基盤整備に関する基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24593254
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東邦大学

研究代表者

中原 るり子  東邦大学, 看護学部, 准教授 (90408766)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード災害看護 / BCP
研究概要

本研究の目的は、震災時の対応からその後の復旧復興までを視野に入れた「看護業務継続計画(Nursing system continuity plan:NSCP)」の作成とその基盤整備である。平成24年度の目標は、震災による影響度の評価である。東日本大震災を経験した2つの病院職員を対象にしたヒアリングと専門家会議から、①看護(病院)機能停止状態、②病院システムの脆弱性の評価、③重要業務が明らかになった。
看護(病院)機能停止状態:調査対象となった3か所の病院は、発災当日から看護業務を維持していたが、時間の経過とともに、受傷患者の受け入れや地域への巡回診療、施設の破損に伴う患者の移送等新たな業務が加わったことにより、通常の看護業務が遂行できない状況を経験していた。
病院システムの脆弱性と被害の評価:平常時の防災訓練の成果が如実に反映された。防災訓練が徹底されていた病院では、発災直後から組織化と病院機能の発揮がスムーズであった。いっぽう、大地震を想定した訓練を実施していなかった病院では、混乱状態が発生し組織化までに時間を要した。それぞれの病院は人員や物資、情報等の不足に見舞われており、日頃の備えが重要であることが浮き彫りとなった。残された病院の機能によっても、復旧までの期間やそのレベルに差がでることが明らかになった。
以上を踏まえて明らかになった重要業務は、①平時における防災訓練の徹底、②災害時対策本部の設置と組織化、③早期からの活動計画の立案と修正、④早期からの病院施設の再展開、⑤入院患者の食事や排泄、清潔といった看護に必要な資材の調達方法の確立、⑥来院者を推定するために必要な情報収集システムの確立、⑦全職員が泊まり込める環境、⑧緊急時の効果的な勤務体制のルール化、⑨早期からの支援者の活用と対応方法の確立、であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年の目標は震災による影響度の評価であった。当初の計画通り、震災の影響を受けた看護職員の体験談を聞くことができた。詳細にヒアリングを重ねると、日ごろの訓練や支援体制が復旧復興に影響を及ぼすことが具体的に理解できた。発災時には組織化と情報管理が重要であることや職員の水や食糧の備蓄、トイレや衣服といった基本的な生活必需品の確保がおろそかになりがちであることも課題であることが明らかになった。生々しい体験や課題を乗り切った知恵と工夫は、今後のNSCPの作成に大いに役立つと考えらえれた。
また、震災の専門家とともにNSCPを取り入れる計画がある都内の特定機能病院の副院長と防災対策担当看護師で検討会を実施した。看護部門だけでなく、病院全体を組み込んだ検討ができたのは予想以上の収穫であった。
ただし、ヒヤリングを行ったのは、看護部門の職員がほとんどであったため、病院組織の様々な部門の状況の把握には至らなかった。診療録/調剤/栄養/医事/資材/人事/輸血など病院には重要業務があるがその洗い出しは次年度の課題になった。また、目標復旧期間や復旧レベルの推定は災害状況に左右されるので、難しいことが分かった。

今後の研究の推進方策

平成25年度の目標は、具体的なNSCPを策定することである。今後病院でNSCCPを作成する計画がある、都内の特定機能病院の関係者や専門家を交えて、利用可能性の高いNSCPを作成する。
新しい研究組織は、吉原克則氏(東邦大学医療センター大森病院副院長;災害コーディネーター)と石井美恵子氏(日本集団災害医学会理事)を分担研究者に加えるとともに、東日本大震災の被災地での支援活動の経験がある平尚美氏(自衛隊病院付属看護専門学校副校長)、尾立篤子氏(自衛隊災害看護指導者)、宮地富士子氏(東邦大学医療センター大森病院災害対策)を研究協力者に加える。吉原氏には研究分担者として病院全体を視野に入れたBCPを作成していただき、宮地氏には研究協力者として看護部のNSCPの作成を担っていただく。石井氏は国際的に災害支援活動を行った経験から、作成されたBCPの評価と提案を主な役割とする。尾立氏と平氏には東日本大震災での経験を踏まえて、NSCPの評価や提案をしていただく。
具体的な行動計画では、(1)災害時の組織化と意思決定および指揮系統の明確化。(2)情報の発信・共有の手段の明確化。(3)緊急時のライフラインの確保のあり方の検討。(4)自家発電装置/飲料水・治療用水の確保。(5)資源の柔軟な活用のあり方の検討。(6)人材派遣/応援体制/近隣あるいは遠隔地の病院との相互扶助のあり方。(7)地域資源の活用、行政や地域との連携などについて検討を図り、NSCPの基礎を整備する。
初年度の成果は国際学会(ICN)で発表し、海外の専門家ともディスカッションを図り、その成果をNSCPに生かす。

次年度の研究費の使用計画

25年度は研究を効果的かつ効率的に進めるために、国内外の学会において災害医療やBCPの知見を集める。
そのため、国内の学会参加費用と旅費・宿泊費として50万円を計上した。その際必要となる翻訳料は10万円とした。
研究分担者吉原氏に病院のBCP作成と病院職員の啓蒙活動のためのセミナーの開催を依頼する。啓蒙活動の運営資金やセミナーの講師への謝礼として40万円を計上する。また、看護部のNSCP作成と勉強会の運営のために10万円を計上する。
図書10万円、パソコン10万円、プリンターインク10万円、会議費10万円として全体で140万円の支出を考えている。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] What Should Hospitals Do From the Time of Earthquake Occurrence Until Recovery and Reconstruction?

    • 著者名/発表者名
      Ruriko Nakahara,Naomi Taira, Atsuko Aurues
    • 学会等名
      2013 ICN(international council of nurses)
    • 発表場所
      Melbourne Australia

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公開日: 2014-07-24  

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