研究実績の概要 |
目的:短期型血液透析用カテーテルにおける血流感染(catheter- related bloodstream infection,CRBSI)発症を予防するための管理方法を開発するために①CRBSI発症率,生命予後およびCRBSI発症要因を明らかにすること(第一研究),②CRBSI発症における起因菌の種類とその伝播経路を明らかにすること(第二研究)である. 第一研究:【結果・考察】2施設において調査した結果,分析対象者は81名,総カテーテル数98本であった.感染確定例は5名,感染症疑い例は12名,非感染症例は64名であった.検出菌はStaphylococcus aureus等の皮膚常在菌であり,発生率は4.04(per 1,000 catheter day)であった.2群間比較からALBは感染群2.4 g/dL,非感染群3.2 g/dL(p<0.001),TPは5.9 g/dL,6.4 g/dL, RBCは27×106/μL,31×106/μL,Hbは8.2 g/dL,9.6 g/dLと感染群が低値であった(p<0.01).留置期間は5.8日,12.8日と感染群が短期であった(p<0.001). 第二研究:【結果・考察】CRBSI発症群5名,発症疑い群10名(細菌検出がなかった2名を除く),合計15名を分析対象とした.試料分析の結果,9菌種41株が検出された.CRBSIの起因菌は,Staphylococcus epidermidisなどの皮膚常在菌が92.7%を占めた.伝播経路分析の結果,患者Eは,カテーテル留置2日目の血液(カテーテル血)と9日目の皮膚からS. hominisが検出された.PFGEは一致(類似性100%)した.カテーテル留置初期に皮膚常在菌が血液に流入した可能性が示唆された.患者Fは,カテーテル留置7,8,22日目の皮膚からS. epidermidisが検出され,PFGEは全て一致(類似性100%)した.この皮膚3株とカテーテル留置22日目の血液(カテーテル血)から検出されたS. epidermidisは,PFGEは不一致(類似性42.9%)であった.血液透析時などの接続時の無菌操作の破綻により,皮膚常在菌が血液に流入したことが示唆された.
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