研究課題/領域番号 |
24593262
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
社本 生衣 椙山女学園大学, 看護学部, 助手 (40593512)
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研究分担者 |
石原 由華 椙山女学園大学, 看護学部, 教授 (30369607)
宇佐美 久枝 椙山女学園大学, 看護学部, 准教授 (80587006)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 看護技術 |
研究概要 |
平成24年度は、入院患者の頭髪汚染状況と洗髪による汚染除去の調査を行った。療養病床入院中の患者38名を対象におこなった。対象患者は週2回定期的に特殊入浴装置によって入浴が実施され看護師による洗髪を受けている。検出サンプルは対象患者の洗髪前後の頭皮、頭髪、耳の後ろの皮膚から細菌を検出した。ブドウ球菌選択培地で分離し、コロニー数を計測、VITEK2による同定と解析、走査電子顕微鏡で頭髪に付着した細菌を視覚的に確認した。 結果分離された細菌は、Staphylococcus aureusとStaphylococcus warneri、Staphylococcus capitis、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus simulansなどのCNSが分離された。この中でも、頭髪に特に高い確率で検出されたのがStaphylococcus warneriであった。頭皮は、Staphylococcus epidermidis等が、比較的高い確率で分離された。また、洗髪による汚染効果については、洗髪後に細菌は減少することなく残存または拡散していた。走査電子顕微鏡の映像にも付着した細菌を確認することができた。 これらの結果から、日頃看護師が実施している洗髪は被髪頭部の汚染除去に効果的に実施され難いことが示唆された。さらに日常的に洗髪ができない安静臥床患者では、危険な感染に繋がりやすい状況であることを示唆し、今後はICN などでカテーテル類が挿入され感染しやすい安静臥床状況にある患者の洗髪方法を構築する意義が高まった。 安静臥床患者の頭髪および頭皮のブドウ球菌による汚染状況、臨床看護師が現在実施している臥床患者の洗髪方法と洗髪前後の細菌汚染状況の変化を明らかにし、臥床患者の頭髪および頭皮の細菌を効果的に減らし得る洗髪技術を開発していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、看護技術として洗髪の効果はいかなるものかの調査と入院患者の汚染状況と分離菌の傾向を知ることであった。定期的に入浴洗髪を実施されている患者を対象にデータ収集及び分析ができたことは、新しく洗髪を開発するうえでの基礎データとして意義にあるものを収集することができた。またこの結果から、今後2年間の具体的方向性を決定することができ、さらに今後の分析方法や実験方法を確立するところまで進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
安静臥床患者の頭髪および頭皮のブドウ球菌による汚染状況、臨床看護師が現在実施している臥床患者の洗髪方法と洗髪前後の細菌汚染状況の変化を明らかにし、臥床患者の頭髪および頭皮の細菌を効果的に減らし得る洗髪技術を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、2段かに分けて研究を進める。 第1段階は2つの調査から構成し、被髪頭部の汚染状況と安静臥床患者に対して看護師が日頃行っている洗髪技術の実態を明らかにする。 調査1は、健康成人および安静臥床患者の被髪頭部の汚染状況について実験的手法による調査を行い被髪頭部の汚染状況と洗髪による汚染除去の実態を明らかにする。健康成人および患者を対象とし、頭皮と頭髪のぬぐい液と頭髪を分析サンプルとする。安静臥床患者のうち、前回洗髪から3日間以上あけて床上で洗髪を行う患者がいた場合には、同意を得て洗髪後にもサンプル採取を行う。分析サンプルから、分子生物学的指標として細菌数、PH、TG値を測定する。また、走査電子顕微鏡およびマイクロスコープにより頭髪および頭皮を観察する。各データについて、①部位別、②健康成人と患者、③患者の洗髪前後、④健康成人の時間経過による汚染変化の比較により傾向を分析する。また、安静臥床患者の洗髪時には看護師の一連の洗髪動作をVTR撮影させていただき特徴を分析する。 調査2:全国の病院の集中治療室に勤務する看護師を対象として、安静臥床患者に対して日頃選択している洗髪方法や課題と感じていることについて質問紙調査を行い、洗髪方法の傾向と課題を分析する。 第2段階は洗浄効果に影響する要素について、実験的に分析する予備実験と、新洗髪技術を構成する要素を検証する実験を行い、汚染除去に効果的な洗髪技術を考案する。予備実験として、被髪頭部に付着した汚染を効果的に除去する方法について手指の動かし方などを検討し分析する。効果の分析は、細菌数、PH、TG値の測定と走査電子顕微鏡およびマイクロスコープによって評価する。第2段階の予備実験と第1段階の結果を総合的に検討し、導き出された洗髪の要素で改善した洗髪技術を健康成人に対して実施し、効果的に細菌を減らし得る洗髪技術を考案する。
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