研究課題/領域番号 |
24593264
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研究機関 | 日本赤十字豊田看護大学 |
研究代表者 |
中島 佳緒里 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 准教授 (90251074)
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研究分担者 |
奥村 潤子 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 教授 (40300222)
竹内 貴子 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 講師 (70387918)
加藤 みわ子 愛知淑徳大学, 公私立大学の部局等, 講師 (90633389)
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キーワード | コミュニケーションスキル / ナラティブ |
研究概要 |
2013年度は,ナラティブモードを促進するためのコミュニケーションスキルの調査と実験を行った。 (1)ナラティブモードと学生ボランティアの思い 被災地に行った学生5名を対象に,被災者の話を聞いた経験とその時の感情の動きについて,面接法を用いて記述的情報を収集した。その結果,36の内容が語られ,それらは‘自分の思い’‘何もできない無力感’‘ボランティアとしての不安’‘話を聞く意味’の4つのコードに分類された。ボランティア学生は被災者と話をする際に,‘自分の思い’や‘ボランティアとしての不安’といった自己中心的な思考にとらわれることで‘何もできない’といった無気力を感じていた。多くの学生が抱く被災地で何かしたいという思いが,肯定的な結果を期待する自己中心的な思考に繋がっていることが推察された。一方,上位学年で見出された‘話を聞く意味’は,被災者の語りを聞くという行動に集中していたことが窺えた。このことは自分ではなく相手の思いを理解しようとする姿勢,つまり相手側の視座にコミュニケーションの中心が置かれていたと考えられた。以上のことから,ナラティブモードになるためには,相手の語りを傾聴する技術と,コミュニケーションをとる側の視座の変換が重要であることが示唆された。 (2)スキル学習の効果 被災地ボランティアを経験した学生が,被災者と話をする時の主な視座が自分自身に置かれていることが,ナラティブモードに移行できない要因のひとつであることが示唆されたことから,スキル学習の効果にパーソナルスペースを用いて視座の変換が起こるかどうかを加えた。本年度は基礎実験として,看護学生のパーソナルスペースの基準値を検討した。看護専門学校生40名の協力を得て実験を行った結果,看護学生ではパーソナルスペースが一般学生と比較して有意に狭く,かなりの接近でも許容できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画を所属大学の研究倫理審査に提出する時期が2か月遅れ,夏季休暇中の申請になったため,研究に協力してもらう学生の募集がスムーズにできなかった。さらに,開講授業時間,臨地実習等の都合によりデータ収集のための時間調整が難しく, すべての面接を終了させるのに2か月を要した。これらの状況により,研究計画スケジュールよりも多少の遅延が生じている。 2014年度は,6月には研究倫理審査の承認を得てスキル学習を開始し,効果の検討を行う予定である。また,研究協力者の募集は,1施設だけでは難しいことも予測されるため,共同研究者の了解を得て,他施設での募集を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は,スキル学習の効果について,実験法を用いて検証する。 専門基礎科目の学習が終わっていない1-2年生30名を対象に,擬似クライエントと援助者を設定し,身体内感覚のメタ認知的言語化,同調性・共振性の評価,共感性の評価を行い,コミュニケーションスキルの効果を実証する。 スキル学習:ケアリングを基本としたコミュニケーションスキル(同調性・共振性,感情の反映等)を学習する。スキルは学習後,必ずエクササイズを実施し,体験する。身体内感覚のメタ認知的言語化の訓練は,DVD視聴あるいはエクセサイズ後の自分自身の内部に生じた漠然とした感覚や感情について言葉で表現する。 効果の実証:スキル学習後,心電図を装着した疑似クライエントに対して,コミュニケーションを10分間とり,心電図上にリアルタイムで生じる自律神経反応とクライエントのアフェクトグエリッド,自由記述によりコミュニケーションの評価を行う。効果判定は,同調性・共振性(反応潜時,表情・身体動作)と共感性(アフェクトグリッド,情動知能尺度)をスキル学習の介入前後で測定し,被験者内比較により確認する。さらに,視座の変換ができているかどうかをパーソナルスペースの測定で検討する。擬似クライエントに心電図を装着し,対象者が近づいてくるときの自律神経反応から,対象者が擬似クライエントの表情や感情に気が付き,パーソナルスペースを擬似クライエントに同調させられるか否かを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
スキル学習の効果を検討するための介入実験を行うため,消耗品の請求と,画像データのDVDへのコピーならびに録音データから記述的情報に変換するための作業を行う人件費に使用する。また,最終年度であるため,論文投稿を行う。 (1)スキル学習の効果実験に必要な物品として,共感性の評価尺度(情動知能尺度 20名分×2回分:30,000円),心電図を使用するためECGディスポ電極(50個:7,500円)を購入する。また,画像データのDVDへのコピーならびに録音データから記述的情報に変換するための作業を行うアルバイトを雇用する(1,250円/時間×10時間:125,000円)。(2)今年度の成果は,日本災害看護学会(東京)で発表予定であり,共同研究者を含めて旅費を請求する。
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