臨床記録には、当該患者の入院目的・治療法、全身状態といったコンテキスト(文脈)が存在し、それが前提となった記載が行われている。特に、経験が豊富な臨床家は、必要最低限の記述で文意を伝えようとするため、途中の思考過程が省略された記述が多く見られる。そのため、機械的に意味を解析するには、どのようなコンテキスト(文脈)で表現された記述なのかをあわせて把握する必要がある。入手可能な言語資源協会の模擬診療録テキストデータでは、このようなコンテキストを抽出することが困難と判断したため、入院時記録に用いられる基礎情報の書式について分析を行うこととした。 その結果、入院時患者基礎情報は、NANDA、オレム、ゴードンなどの看護モデルに準じた書式となっているが、その背景にはそれぞれの情報がどのように活用されるべきかという目的があった。入院時記録基礎情報の分析の結果、以下の6つのコンテキスト(情報活用の目的)を抽出した。「疾患、治療方針を正しく認識しているか」「納得して治療が受け入れられているか」「継続してきた医療処置が適切に行われるか」「コミュニケーションが良好に行えるか」「日常生活が快適に送られるか」「安全に生活できるか」である。 これ以外にも入院目的、治療目的によって詳細な情報が収集されるが、それは標準的な書式には現れておらず、個別に記録がされていると思われた。この内容から、それぞれの目的にあわせたアウトカム評価が可能になったと思われる。
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