研究課題/領域番号 |
24593285
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柴山 大賀 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80420082)
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研究分担者 |
佐藤 栄子 足利工業大学, 看護学部, 准教授 (20279839)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 自己管理行動 / common sense model / 評価尺度 / 患者教育 |
研究実績の概要 |
今年度は、糖尿病患者の療養行動とその促進要因を測定する方法について、自記式質問紙に変わる方法について情報収集に努めた。今年度はふたつの方面から情報収集に努め、ひとつは、臨床検査データに基づいて類推する客観的方法であり、学会の参加などの研究者との交流を通じて情報収集に努めたが、既存の方法を超えるものは見つけられなかった。ふたつめは、専門家による他者評価に基づく方法であり、こちらについては糖尿病のフットケアについての共同研究において、その可能性を模索中である。 また、海外の先行研究に反して、本研究において自記式質問紙がうまくいかなかったのは、わが国の文化的特徴が影響している可能性も考慮し、今年度は、common sense modelに基づく自記式評価尺度であるIPQ-Rを用いた海外での調査も行った。200名のイランの2型糖尿病患者を対象に、療養行動をSDSCAペルシャ語版で、病気認知をIPQ-Rペルシャ語版で測定し、両者の関連を検討した。IPQ-Rペルシャ語版については探索的因子分析の結果、事前に想定されたのと概ね類似した因子構造が得られた。療養行動と病気認知の関連については、一部の下位尺度間に弱い相関が認められた。重回帰分析の結果、「一般的な食事」には「ネガティブな感情表象」と「病気の結果」が、「特別な食事」には「自己統制感」と「病院の原因(心理的特徴)」が、「運動」には「病気の同定」と「自己統制感」が、「血糖自己測定」には「自己統制感」「家族からのサポート」「病気の原因(リスク要因)」が関連していた。これらは合理的な解釈は可能であったが、関連の強さ自体はそれほどでもなく、モデルの説明率も想定より低かった。 イランでの調査結果は、自記式質問紙による測定を否定するものではないが、測定精度の限界を示唆するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究計画で当初目指していた介入研究にいたる準備の段階で、患者アウトカムやプロセス評価のための測定指標の開発に想定外の支障が生じた。その解決に向けた原因の探究と、新たな測定方法の模索に努めたが、目立った成果は得られなかった。 また、海外での調査結果については年度内に公表予定であったが、この調査で中心的な働きをした研究協力者が年末に体調を崩したために、論文化の作業も遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、当初想定していたような成果は得られなかったが、糖尿病患者の療養行動を自記式質問紙で測定することの限界が明らかとなったことは、今後の研究展開のうえで重要な示唆が得られたと受け止めている。 具体的には、自記式質問紙による評価が有効な患者と、そうでない患者が混在している可能性がり、両者の識別を可能にするような患者要因を同定するための研究が求められる。 さらにそのうえで、自己評価による方法が適切でない患者の療養行動を評価するための新たな評価指標の開発が急務である。
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次年度使用額が生じた理由 |
すでに調査は終了しているが、研究協力者の体調不良により論文執筆に遅れが生じ、年度内の成果報告ができなかったため、次年度に成果発表にかかる費用が必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度中に、今後の研究展開に向けた情報収集のための学会参加の旅費のほか、研究成果の公表手段として海外雑誌に論文を投稿するため、英文校正や論文掲載料として使用する計画である。
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