研究課題/領域番号 |
24593289
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
古屋 洋子 山梨大学, 医学工学総合研究部, 講師 (80310514)
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研究分担者 |
中村 美知子 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (80227941)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 胃切除術後患者 / 食事摂取状態 / 回復状態 |
研究概要 |
胃切除術後患者は,術後愁訴による苦痛に加え,絶食期間が続くことから,低栄養状態に陥りやすい。一方,術後は,全身の筋組織での蛋白分解や体脂肪組織における脂肪分解がすすみ,エネルギー産生が促進し,組織の修復と脂肪の回復には術後数か月を要する。特に術後は,脂肪の吸収障害が著明であり,術後患者へのn-3系多価不飽和脂肪酸に富む魚油を強化した栄養剤の投与では,死亡率,感染症発生率,在院日数を改善させることが報告されており,周手術期における栄養摂取の重要性が示唆されている。そこで,本研究は,胃切除術後患者の回復過程に適った栄養摂取を援助するために,食事摂取状態(1日摂取エネルギー・栄養素量,たんぱく質:脂質:炭水化物/エネルギー%比)と身体の回復状態(自覚症状,BMIおよび血液生化学検査結果など)の関連を明らかにし,臨床看護師による胃切除術後患者の回復状態に適った食事指導方法について検討している。 平成24年度は,胃切除術(腹腔鏡補助下胃切除術,幽門側胃切除術,胃全摘術患者を含む)後患者のリクルートおよび手術前,術後食事開始時,退院時,退院後1および3ヵ月に調査を開始した。平成25年4月末までに,腹腔鏡補助下胃切除術23名,幽門側胃切除術11名,胃全摘術患者11名の協力を得た。得られたデータの一部から,胃切除術後患者の脂肪摂取量と血中脂質濃度の変化について検討した。その結果,胃切除術後患者の脂肪摂取量と血中脂質濃度の特徴は,総エネルギー量,特に脂肪摂取量が低下し,血中HDL-C,EPAが術後1週目には有意に低下したことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の対象者のリクルート結果から,幽門側胃切除術,胃全摘術例数が目標数に達していない。術式(残胃容量や術後侵襲の程度)に応じた栄養摂取を検討するためにも,引き続き,研究対象のリクルートを実施する必要がある。研究協力施設の年間胃切除術実績は,腹腔鏡補助下胃切除術19例,幽門側胃切除術15例,胃全摘術患者15例であるため,平成25年度中のデータ収集完遂は可能と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
目標症例数は,腹腔鏡補助下胃切除術,幽門側胃切除術,胃全摘術患者を含む胃切除術後患者各20名の合計60名。現在,幽門側胃切除術,胃全摘術例が目標数に達していないため,引き続き,研究対象のリクルートを実施する。得られたデータは,順次入力を行う。データベース作成に関しては,「守秘義務」を徹底しセキュリティー環境を確保する。食事摂取量におけるエネルギーおよび各栄養素量の計算は,五訂増補日本食品標準成分表を用い,栄養評価ソフトエクセル栄養君Ver.6.0により算出する。データ分析は,術式別(腹腔鏡補助下胃切除術,幽門側胃切除術,胃全摘術患者)に以下の点を検討する。(1)胃切除術後,食事開始時から退院後3ヵ月の食事摂取状態,回復状態の経時的変化の比較には,反復測定一元配置分散分析を用いる。(2)各期における食事摂取状態,回復状態の比較には,t 検定とMann-Whiteny のU 検定を,食事摂取状態,回復状態の関係には,Pearsonの積率相関係数を用いる。統計解析ソフトIBM SPSS Statistics version 20.0J, for Windows (SPSS IBM Japan Inc., Tokyo, Japan)を用い,すべての解析は両側検定とし,有意水準は0.05とする。調査結果のまとめと分析をすすめ,臨床看護師による回復状態に適った効果的な食事指導指針づくりのために,経時的な食事摂取状態と身体の回復状態の関連性について分析・検討する。本調査によって得られた成果は,論文としてまとめ,日本看護科学学会,The European Society of Clinical Nutrition and Metabolism 等への発表,投稿を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は,2~3月期にもデータ収集を継続した。血液検査委託料の執行計画は3月期までで行っていたために,研究費執行不可期間執行分が未使用となった。次年度使用額は,血液生化学検査分析の支払に充てる予定である。
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