研究課題/領域番号 |
24593293
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
師岡 友紀 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40379269)
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研究分担者 |
梅下 浩司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60252649)
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キーワード | 生体肝移植 / 生体ドナー / 心理社会的側面 / QOL / 内容分析 / 質的分析 / 量的記述的デザイン |
研究概要 |
本研究は、生体肝移植ドナー・レシピエント・家族の抱える問題、および必要とされる支援を明らかにすることを目的として実施している。今年度は成果発表を行うとともに研究計画を立て直し、家族内の関係性の問題をより客観的に明らかにすることをめざし、調査実施を進めた。 現段階の成果として、生体肝移植ドナーの移植手術に関する自由記述の分析から、ドナーは【生体肝移植の恩恵を受けられたことへの感謝】を示す一方、【直面する生体肝移植の限界】を示すものも多く、いずれも過半数を超えていることが明らかになった。また【ドナーの抱えるストレス】として術後の心身の多面的な負担と、術前に思いを馳せる【危機的な術前】も示された。上記の内容の記述数の割合を対象者背景により群分けし比較したところ、小児への移植のドナーは成人間移植ドナーよりも【生体肝移植の恩恵を受けられたことへの感謝】を有意に多く記していた。またレシピエントの予後(生存・死亡)で分類した場合、レシピエントが死亡しているドナーは【生体肝移植の恩恵を受けられたことへの感謝】を記述する割合が有意に少なく【直面する生体移植の限界】を有意に多く記述することが明らかになった。以上より、生体肝移植ドナーは移植手術に満足する一方、様々な課題にも気づき、そうした傾向はレシピエントとの関係性やレシピエント予後と関連していることが明らかになった。移植医療に対する満足感と限界に関する認識は、生体移植の評価におけるキーワードになると考えられる。 以上の成果は、国内学会2件、国際学会1件で発表し、海外雑誌に投稿中である。現在、レシピエントの事例研究および手記等から生体肝移植の課題を明らかにする文献研究に着手しており、併せて今後は移植コーディネーターを対象とした研究を実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究対象となりうるドナーやレシピエントに心理的負担をかけ新たにデータを収集するのではなく、未分析のデータや先行研究および手記の文献検討からも目指すべきデータが得られることが判明したこと、加えて、関係性の問題はドナー・レシピエント・家族のすべてと関わる移植コーディネーターの認識を捉えた方が的確に把握できると考えたことで、計画の再検討および変更を行ったことが遅れの要因である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は新たに得たデータではなく未分析のデータから十分な成果を得ることができた。そのため、研究計画全体を見直した。レシピエントの抱える課題に関しては、文献研究を行うことで対象に負担をかけず効率的なデータ収集が可能と考えられた。また、関係性の問題は、客観的に捉える必要性が高いことから、移植コーディネーターへの面接調査を通して現象を明らかにする計画に変更した。以上2点の計画変更により、成果に直結するデータを速やかに取得する予定である。今後、すみやかに変更した計画に関する倫理審査の申請する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の変更と遅れにより、未使用額が生じている。 当初、ドナーとレシピエントへの面接調査と質問紙調査を予定していたが、未分析データの解析とその発表に伴う、成果発表に関わる諸費用が中心となった。 今後は、引き続きレシピエントの事例研究および手記を用いた文献検討を進めるとともに、移植コーディネーターへの面接調査を実施する。結果、複数施設の移植コーディネーターに面接調査するための旅費が必要になり(50万円程度)、逐語録に起こす費用等(10万円程度)が必要となるため、予算計画をたて直す。 これまでの残額は、主にはデータ収集のための旅費にシフトして用いる予定である。また、引き続き成果の発表を進めるため、英文校正等の費用も必要となる(30万円程度)。その他、トナーカートリッジ等、消耗品の費用に充てる。
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