研究課題/領域番号 |
24593295
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
上杉 裕子 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (40423230)
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研究分担者 |
西山 隆之 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (10379373)
西井 孝 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70304061)
黒田 良祐 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80379362)
藤代 高明 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (50448172)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 運動療法 / 変形性関節症 / ICT |
研究実績の概要 |
我々は平成24年度に、高齢者化社会に伴い増加している関節疾患患者が在宅において運動療法を継続し、身体機能を維持・拡大していくことを目的としたWebページを考案・開発した。平成25年度は、そのWebの汎用性を検討した。平成26年度は実際に、Webを見ながら運動を行った股関節症患者の、身体機能や精神面の変化を自記式質問紙において確認を行った。自記式質問紙調査票は患者主観調査として、包括的健康QOLであるSF-8、 股関節評価尺度であるJHEQ、Oxford Hip Score(OHS)、結果を生み出すために必要な行動をどの程度うまく行うことができるかという個人の信念であるセルフエフィカシーを測定する一般性セルフエフィカシー(自己効力感)尺度(GSES)を用いた。18人に介入し、6か月後に追跡調査できたのは変形性股関節症患者11人(男性1、女性10:平均年齢55.5(SD=9.1)歳)であった。解析にあたり、左右の得点が示されるものは患側側を、両側患者は痛みの強い側を分析データとした。各尺度の6か月後の変化は、有意差は認められなかったが、SF-8の身体面PCSは43.54から44.39、精神面MCSは50.44から50.86、JHEQ痛みは11.45から12.00、メンタルは12.64から14.64と得点が上昇し、改善傾向であった。GESEも、8.73から9.09と上昇していた。OHSのみ得点が低い方がよい尺度であるが、これも25.73 から24.09と改善傾向にあった。以上の結果から本Webによる運動効果が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の平成26年度の目的は「患者が運動を継続できるICTツールとしての運動療法Webの効果を検証する」ことであった。介入後6か月の結果は、健康関連QOL尺度であるSF-8の身体面PCSは、43.54から44.39、精神面MCSは50.44から50.86、股関節評価尺度であるJHEQ痛みは11.45から12.00、メンタルは12.64から14.64と得点が上昇し、改善傾向であった。一般性セルフエフィカシー(自己効力感)尺度(GESE)も8.73から9.09と上昇していた。Oxford Hip Score(OHS)は得点が低い方がよい尺度であるが、これも25.73から24.09と改善傾向にあった。以上の結果から本Webによる運動効果が示唆され、Webの効果が検証でき、おおむね順調に達成されたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で制作したWebの機能が、他の疾患にも汎用できるかなど、Webの発展の可能性を検討していきたいと考えている。特に高齢化社会により慢性疾患を持つ患者は増加し、それに伴う下肢人工関節置換術は増加の一途をたどっている。またわが国では糖尿病患者も増加している。糖尿病は手術後感染の重要なリスク因子とされているが、糖尿病の治療を受けていない予備群も含めて、手術後に糖代謝機能異常がどのように推移し、感染のリスクになりうるかは明らかにされていない。また、在院日数短縮の昨今、退院後の地域連携システムの充実は必須であり、糖尿病患者においては、医療者と連携しながら自己管理をいかに適切に行うかは重要な課題である。 本研究課題で制作したWebには双方向性があり、意見交換・情報交換における即時性があり、医療者が患者の状況を把握でき、適切な時期に適切な介入が行える。よって、今後の研究の推進方策として、糖尿病および予備群患者の下肢人工関節手術後感染予防のための患者参加型地域連携血糖管理ICTシステムの開発を行い、感染予防介入とすることを検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
介入研究のため、介入効果を測るための介入後調査票回収が必要であったが、一部の患者からの返信が遅くなり、分析が予定通りに進まず、その研究成果の公表のための学会発表を次年度の予定としなくてはならなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度であり、今までの成果をまとめて学会発表するための旅費としての使用を計画している。
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