研究課題/領域番号 |
24593307
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
城丸 瑞恵 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (90300053)
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研究分担者 |
佐藤 幹代 東海大学, 健康科学部, 講師 (00328163)
水谷 郷美 順天堂大学, 公私立大学の部局等, 助教 (40621727)
小平 朋江 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 准教授 (50259298)
伊藤 武彦 和光大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60176344)
本間 真理 札幌医科大学, 医学部, 助教 (90423780)
門林 道子 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (70424299)
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キーワード | 乳がん / 闘病記 / 全人的苦痛 / ベネフィットファインディング / 対処 |
研究概要 |
本研究は、手術をした乳がん患者の闘病記から得られたテキストデータを質的・量的に分析して、手術後から回復期の全人的苦痛の様相と対処およびベネフィットファインディング(Benefit Finding)を明らかにすることを目的としている。 2013年度は、2000年代に出版された乳がん患者が著した闘病記22冊を分析の対象とし、病い体験による肯定的変化と身体的苦痛について明らかにして国外の学会で発表した。これらの成果は国内外の学会誌に投稿するために準備中である。全人的苦痛の他の要素である精神的苦痛・スピリチュアルペインは分析をすすめている。これらの分析によって得られた知見をもとに本研究で入手した約180冊の闘病記について、テキストマイニングで分析を行うために、研究の枠組みについてメンバー間で検討した。 学会発表の概要: 本稿で分析した22冊の著者の出版時の年齢は33~70歳代であり、2名は死亡後に出版された。22冊を全編読んで乳がん体験による肯定的変化を表現する文脈を抽出した結果、【他者に対する感謝の芽生え】【平常がもたらす喜び】【自己の成長の喜びと実感】【自己の存在理由の意識化】【沸き上がる生への希望】【他者への貢献の願い】の6つのカテゴリーが生成された。さらに身体的苦痛について分析した結果、【初期治療に至るまでの自覚症状】【検査に伴う痛み】【手術直後の耐え難い痛みと感覚異常】【術後3か月以上継続する痛みと感覚異常】【非侵襲的治療に伴う副作用や痛み】【身体の可視的変化に伴う失意と落胆】【転移の痛みによる身体機能およびADLの低下】の7つのカテゴリーが生成さた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度の目標は、約30冊の闘病記を対象に手術後から回復期の苦痛の様相と対処およびベネフィットファインディングについて質的に分析を行うことであった。分析した闘病記は22冊と予定より少なかったこと、また計画していた精神的苦痛とスピリチュアルペインの分析は実施できなかったことが目標達成できなかった点である。しかし、2013年度は、苦痛の様相のうち身体的苦痛およびベネフィットファインディングの分析が終了して関連学会に投稿準備中である。また、約180冊の闘病記の大量データの分析の枠組みも検討することができた。そのため研究は概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は22冊の闘病記の精神的苦痛とスピリチュアルペインの分析を行い、学会に発表する。また身体的苦痛およびベネフィットファインディングに関する知見は関連学会に投稿する。これらの知見を基にして約180冊の闘病記の分析を行い、その結果から乳がん患者の苦痛に対処する支援モデルの構築を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は,成果の国外発表を1本と予測していた。しかし、分析結果から2本の発表が可能となり、物品費などを共同研究者の旅費に使用したため、費目別の配分の変更となった。また、年数回の共同研究者ミーティングに全員参加することを前提に予算配分を行ったが、メンバーの中で参加できない回があったため、未使用額として残った。 来年度は、研究成果を国外雑誌に投稿するための翻訳料・校閲料、および国内外の学会発表にかかる参加費・旅費を中心に予算を使用する。
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