終末期を介護保険施設で迎える利用者の意思決定の実際について、「がんを有する介護保険施設利用者の調査-緩和ケアに切り替える時、および切り替えた後の意思決定の実際-」(千葉県立保健医療大学紀要7巻1号、11~19頁)としてまとめた。 その中では、がんのために終末期を介護保険施設で迎える利用者の意思決定では、≪家族はがんの治療よりも認知症が気がかりになる≫ことや≪家族は病状の改善には消極的になる≫ために、≪家族は医療に頼らず自然死を要望する≫という実態があることを報告した。このように、介護保険施設利用者の治療や療養の場に関する選択には、利用者の家族が抱く年齢や認知症に対する先入観が影響を与える可能性があり、且つ、家族による代理意思決定の特徴的な点であると考えられた。 また、「高齢がん患者の在宅移行時における意思決定と家族の在宅ケアの実際」として第35回日本看護科学学会学術集会で発表を行った。がんの治療から在宅での緩和ケアに移行する意思決定を行った5組の高齢がん患者と家族に面接調査を行った。在宅ケアを選択した意思決定は<患者・家族は積極的治療が限界なので在宅に移行する>など3カテゴリーが抽出された。また、在宅ケアの実際として<介護する家族に十分な支援がない><死の受容による患者家族の成長>など5カテゴリーが抽出された。これらのことから在宅ケアに移行した後に家族は在宅ケアに悩みながら患者の死と向かい合い死生観を育てることで成長していることがわかった。 高齢がん患者の在宅ケアの意思決定には高齢がん患者だけでなく家族も含めた意思決定の形成を行い、患者の価値観を理解しながらお互いに死生観を育てられるようなグリーフワークが必要であると考えた。そこで、患者と家族がお互いの死生観や生きていく上で大切にしていることについて共通理解を得るための「コミュニケーションノート」を作成した。
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