研究課題/領域番号 |
24593335
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
田中 晶子 昭和大学, 保健医療学部, 講師 (90424275)
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キーワード | さする / 触れる / 呼吸 / 意識障害患者 / 刺激 |
研究概要 |
25年度目的:急性期意識障害患者の呼吸が「さする」刺激と「触れる」刺激でどのように変化するのかを明らかにする。 研究方法:挑戦的萌芽研究(2011)で健康な成人を対象として、「さする」刺激は呼吸数が上昇する刺激であることが明らかになった。臨床実験では、健康成人と同様の実験プロトコルである、安静(4分)-刺激(1分)-安静(1分)を2回繰り返すという方法で実施した。臨床実験を行うにあたり、学部及び実験を実施する病院で倫理審査の承認を得て行った。患者選択に関しては、研究代表者が 患者選択を行い担当医師が患者の病状が落ち着いており実験を実施できると判断した意識障害患者に実施した。測定器具はMLT1132RespiratoryBeltTransducerADINSTRMENTS社製を胸部に装着して呼吸状態を測定した。呼吸データはPC上のPower Lab16SP(AD Instrument)に記録し、安静及び刺激データは60秒ごとに分析した。 結果:対象患者は、くも膜下出血患者3例・脳幹部梗塞患者1例・視床出血1例硬膜下血腫1例 ギランバレー症候群1例 ALS1例の8例を実施した。分析は対応のあるt検定を行った。呼吸数の変化は、安静時と比較し、touch刺激時の呼吸数は減少したがp=0.110で有意差は認められなかった。stroke刺激では、呼吸数の増加がみられp=0.017と有意差が認められた。 考察:不安感が高い人は外的刺激で呼吸数が増加するという報告があり、さらに呼吸数の上昇は不安感と相関があるということが明らかになっている。(Masaoka,Y.1999)今回の意識障害患者の実験結果からstroke刺激は安静時と比較し有意に呼吸が上昇した。この結果から、stroke刺激が刺激の予期などの情動を引き起こし、そして扁桃体が賦活し呼吸の上昇を引き起こしたと考えることもできる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
25年度では、意識障害患者の呼吸測定を臨床で実験し分析した結果をもと健常者の脳波研究を実施する計画を立てていた。 今回8症例の意識障害患者に健常者と同様の実験プロトコルである、安静(4分)-刺激(1分)-安静(1分)を2回繰り返すという方法で実験を行い、stroke刺激では、呼吸数の増加がみられp=0.017と有意差が認められた。当初の予定では、12月まで臨床実験結果をまとめ、学会発表及び論文作成を行う予定であった。しかし実験にふさわしい対象患者が現れず、3月まで実験を行っていた。そのため研究計画は少し遅れ気味である。今後は健常者に同様のプロトコルで脳波測定を実施し、扁桃体の変化をみていく予定である。現在脳波研究の研究計画書を作成し倫理委員会に申請予定である。倫理審査通過後、購入した脳波計を用いて実験を開始していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
25年度の臨床実験の結果では、「さする」刺激において呼吸数の増加がみられp=0.017と有意差が認められた。touch刺激時の呼吸数は減少したがp=0.110で有意差は認められなかった。26年度は25年度の研究結果を踏まえ健康成人を対象とし、呼吸をトリガーとする脳波双極子追跡法を用いて、「さする」刺激と「触れる」刺激を行うと脳のどの部位に変化が現れるかを追求する。そして触覚刺激の違いが脳にどのような影響をあたえるのかを明らかにすることを目的とする。 27年・28年度は、24年度に臨床で行ったくも膜下出血患者3例・脳幹部梗塞患者1例・視床出血1例 硬膜下血腫1例 ギランバレー症候群1例 ALS1例の意識障害患者に近い患者を選択する。26年度に健康成人に実施した実験プロトコルと同様の方法で、意識障害患者を対象とし、脳波双極子追跡法を用いて実験を行う。そして脳が賦活化する「さする」と「触れる」刺激方法を明らかにする。この結果を基に家族や看護師が簡単に実施できる触れ方を提案していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は脳波による実験を実施する予定で脳波計を購入した。購入にあたり、事前に見積もりをとってもらった時点でかなりの金額になる予定であったが、今年度の予算内で購入できたため、翌年度の繰越金として残った。 今後は脳波計で使用する消耗品及び分析に必要な統計ソフトを購入する予定である。
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