脳血管障害で意識障害となった患者5名を対象に、ハンドタッチの生理的効果について検証した。タッチは、被験者の手に「触れる」と「さする」とし、実験プロトコルは、仰臥位安静4分、手に「触れる」及び「さする」各1分を2回繰り返した。継続的に心電図、呼吸数を測定した。各指標について安定したデータ1分間の平均値を求めた。分析は心拍変動解析で副交感神経指標(HF)、交感神経指標(LF/HF)を自然対数に変換し相関係数を求めた。呼吸数はt検定を行った。その結果「さする」刺激は呼吸数を有意に増加させた。「さする」刺激時の呼吸数とLF/HFは弱い相関があった。この結果から「さする」刺激時の呼吸数の増加は交感神経を上昇させる傾向にあり、この刺激は、扁桃体を活性化させる刺激である可能性が高いことを明らかにした。この結果を踏まえて、健常者を対象に痛み刺激時の「さする」と「触れる」の効果を明らかにした。痛みは、臨床場面で最も多い訴えのひとつである。患者の痛みを軽減する方法にタッチングがある。この効果を脳活動と情動から明らかにしている研究は少ない。本研究では、「触れる」と「さする」刺激が痛みの軽減に繋がるかを情動反応と脳波から脳活動を捉える双極子追跡法により効果の関係性を明らかにした。被験者は健康女性20名で右示指に痛みを伴う経皮通電刺激を30 秒間ずつ与え、痛み刺激のみ、背部に「触れる」及び「さする」をランダムに施行した。痛み感覚はVASで記録した。痛みの感覚は痛み刺激のみより背部-rubで有意に減少した。痛み関連電位発生源は、痛み刺激のみではP300内で左体性感覚示指領域、帯状回に認められたが、背部-rubでは これらの活動が認められなかった。痛み刺激と同時に他の刺激を与えることにより、痛みによる体性感覚、及び痛みの感覚が減少することが脳活動から捉えられた。この結果を論文作成し投稿予定である。
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