研究課題/領域番号 |
24593346
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
松本 麻里 兵庫医療大学, 看護学部, 講師 (30295109)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患 / 急性増悪 / 自己管理行動 / 測定尺度 |
研究概要 |
[COPD患者の急性増悪の予防・対処行動の構成概念の検討] COPD患者の急性増悪の予防・対処行動は複数の概念で構成される。よって、構成概念の検討および焦点化をはかるために、COPDの増悪のマネジメントに言及した既存の文献および研究のレビューを行った。 COPDの急性増悪期の主たる管理目標は、病状の悪化を早期に発見し、治療を開始することである。しかし、現状では、COPD患者は、症状の変化に対して、必ずしも望ましい対応をしているわけではない。先行研究によると、高齢のCOPD患者78名のうち、20%以上の患者が呼吸困難、咳、痰などの主要なCOPDの症状のモニタリングをしていない状況であった。また、患者が自覚した増悪のうち、医療従事者に報告し、適切な治療を受けるのは50%未満であり、疾患の理解がある患者でさえも、増悪の症状や徴候に気づいても、その変化に即時に反応していない傾向にあることが報告されている。 以上より、COPDの増悪による症状・徴候に対する認識や解釈の仕方には個人差があり、急性増悪の症状・徴候の発見の仕方や対応の違いに反映されることが示唆された。よりよいセルフモニタリングは、セルフマネジメントを改善するための情報を提供する。増悪による症状・徴候に対する気づきや解釈を含むセルフモニタリングを向上させることが、COPD患者の急性増悪の予防、早期発見、および適切な対応につながると考える。本研究では、COPD患者の急性増悪に関するセルフモニタリングに着目し、測定尺度を開発する。測定尺度は、個々のCOPD患者がセルフモニタリングの現状を客観的に把握し、増悪の予防、早期発見、適切な対応に向け、自律的に行動を改善するために有用である。また、看護職は、COPD患者のセルフモニタリングを的確にとらえることで、介入の焦点の明確化や評価が可能となり、効果的な看護介入の検討に活用できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、構成概念の検討に基づいて、COPD患者が実際に行っている急性増悪に関するセルフモニタリングの測定尺度の質問項目抽出のためのヒアリング調査を計画したが、研究協力施設の倫理審査委員会の開催が延期されたため、調査開始が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1)患者が実際に行っているセルフモニタリングについてヒアリング調査を実施する。対象はCOPD患者10~20名程度とし、急性増悪に関するセルフモニタリングに焦点を当てた半構造化面接を行う。対象者ごとに作成した面接内容の逐語録をよく読み、セルフモニタリングの属性である「自覚」、「測定・記録・観察」、「解釈」に該当する記述データを抜き出し、一つの記録単位とする。各記録単位の意味・特性を推論し、簡潔に本質的な意味を表すように表現し、コードとする。そして、意味内容の類似するコードをまとめてカテゴリー化する。 2)ヒアリング調査に基づいて、COPD患者の急性増悪に関するセルフモニタリングの測定尺度の試作版を作成する。試作版の内容妥当性を検討するために、呼吸器疾患患者の看護に携わる看護師3名程度に、尺度を構成する質問項目の適切性の検討を依頼する。 3)研究推進に必要となる測定尺度の開発や統計学的解析法に関する研修会に参加し、測定尺度の試作版の信頼性・妥当性を検討するための知識や方法を身につける。 4)COPD患者150名程度を対象に、急性増悪に関するセルフモニタリングの測定尺度の試作版を用いた質問紙調査を実施し、同時に基準関連妥当性を評価するための外部基準となるデータなどを収集する。また、試作版は、信頼性係数を推定するために、1か月程度の間隔をおいて、2回実施する。その後、因子分析による各項目の因子負荷量や共通性の検討、および外部基準のデータとの相関係数を算出し、それをもとに項目を選んで尺度を構成する。項目の組み替えを何度か行い、信頼性係数と妥当性係数が満足すべきものになった時点で尺度作成を終了する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、ヒアリング調査を実施するために、調査旅費、対象者への謝礼、面接内容の逐語録作成の委託費(テープ起こし)等に使用する。 作成した測定尺度の試作版は、COPD患者150名程度を対象に実施し、統計学的解析法を用いて、尺度の信頼性・妥当性を検討するため、尺度開発や統計的解析法に関する書籍の購入や研修会の参加、質問紙印刷などが経費として必要となる。
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