研究課題/領域番号 |
24593357
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐山 光子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50149184)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リプロダクティブヘルス / HIV感染対策 / 産婦人科 / 感染管理 / 助産師 / 女性の健康 / HIV感染母子支援 |
研究概要 |
1.調査票の作成と研究体制整備:2000年実施の「女性とHIV/エイズ」意識調査票(学生、育児期女性)、産科業務の感染管理調査票(医療施設)を点検し改正調査票案を作成。エイズ拠点病院感染症ナース及び助産師と研究体制をつくり、助産師職能団体、県の健康対策課母子保健係との研究連携を開始。 2.倫理審査委員会の承認:上記を経て医学部倫理審査委員会に申請し「条件付き承認:具体的なアンケート内容を提出すること」で承認された。 3.専門家3名の知識提供による研究計画の見直し:HIV感染症専門ナース、HIV/エイズカウンセラー、女性の意思決定支援研究者の指摘により研究計画の修正を行った。①HIVアンケート実施自体がHIV偏見を助長するという指摘があり、HIVに特化せずリプロヘルスの包括的支援を戦略とすべきとする助言を得た。医療施設調査では産婦人科外来業務の調査が重要との助言を受けた。これを受けて改正調査票案の項目検討だけでなくアンケート実施の是非を再考し仕切り直しを行った。②HIV感染女性・子育て女性の募集に関して妊娠希望のHIV感染夫婦の相談、病院紹介を行っているカウンセラーの情報提供を受け、協力要請により研究協力の呼びかけ窓口となる承諾を得た。この協力体制により、HIV感染女性及び生殖補助医療を受ける夫婦に関わる助産師と感染管理室ナース、その当事者である女性とがつながり、面接調査を進めることが可能となった。③HTLV-1感染妊婦の母乳栄養に対する意思決定支援の知識と情報提供により、本研究の包括的支援にも適用可能な理論であることの示唆を得た。 4.包括的支援戦略モデルの探索:「新潟HIVカンファレンス」(2013.1新潟)「HTLV-1母子感染防止研修会」(2013.1東京)「風疹流行と母子感染防止対策会議」(2013.3東京)に参加し推進・運営体制に関する情報収集を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.研究推進組織の立ち上げ:ほぼ計画通りに進行している。条件付きで医学部倫理審査委員会の承認をうけ、研究推進組織に参画するメンバーの連携体制はほぼ確定した。 2.調査の実施体制と調査の開始:やや遅れている。理由は、質問紙調査の内容を見直し改正調査票による準備を進め実施予定であったが、倫理的配慮を再考する必要が生じ今年度に実施できなかったためである。今年度計画では大学生及び子育て女性を対象に「女性のHIV感染リスク及び妊娠時HIV抗体検査に関する知識と意識」のアンケート調査を実施する予定であった。また、助産師を主とする産科業務の感染リスク調査については2001年、2009年の調査結果をもとに、出産を取り扱う小規模病院、診療所、助産所を対象に実施する計画であった。今回、調査票の内容を点検し改正調査票の作成を終え印刷の準備を行った。しかし、先の調査用紙作成の協力者であるHIV感染専門ナースによる専門家の意見の提供において、HIV/エイズに関する調査自体が偏見を招きやすいことが指摘され、また、感染対策においては産科業務だけでなく産婦人科外来、新生児領域における感染対策も視野に入れた包括的な調査の必要性が提示された。海外文献では経膣超音波操作によるHPV感染の報告が見られている。また、リプロダクティブケア領域においてはHTLV-1母子感染防止対策の取り組みが先行している状況もあったためこれらも包含する支援戦略の検討が必要になった。以上のことから、アンケート調査の実施は先延ばしとし、慎重に取り組むこととした。 3.HIV感染女性及び感染カップルの面接調査:ほぼ計画通りに進行している。対象者に研究協力を呼びかけ、コンタクトをとるために、HIV/エイズカウンセラー、エイズ拠点病院の感染症ナース、スイムアップ法による体外受精治療のカップルの相談助産師の研究連携体制が整い、活動が可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
1.今年度未実施のHIVに関する知識/意識アンケート調査:リプロヘルスの包括的支援戦略の視点を盛り込んだ調査票を作成し、再度倫理審査の承認を得て、25年度に実施する。とくに産婦人科外来領域の感染対策実態調査は、これまでの産科業務の感染対策調査と業務内容が異なる調査となるため、現場ナースの協力体制のもとで検討会議をもち調査用紙を作成する。 2.HIV感染女性及び生殖補助医療を受ける感染夫婦、その治療により妊娠出産し子育て中の女性に対する面接調査:主としてHIV/エイズカウンセラーを介して研究協力者を募り、インタビュー調査を開始する。面接調査は対象者の居住地や当事者の事情に応じて研究者が全国各地に出向き実施する。協力者の数は多くはないと予測されるが質的研究により個別の体験を収集する。また、病院で生殖補助医療を受けるHIV感染夫婦の相談・支援を担当する助産師とのタイアップによりインタビュー調査を開始する。それをもとに包括的支援に関わる保健医療関係者を対象としたフォーカスグループインタビューにつなげる。 3.フォーカスグループインタビューの実施:25年度の段階で産婦人科領域の感染対策実態把握を目的とするアンケート調査を実施し、この結果にをもとに病棟及び外来業務に関わる看護師・助産師、感染症看護師によるフォーカスグループインタビューを行う。HIV感染女性及び生殖補助医療を受ける感染夫婦の面接調査の所見をもとに、包括的支援をテーマとして勤務助産師と地域開業助産師、保健師、母子保健行政者をメンバーとするフォーカスグループインタビューにつなげる。 4.専門的知識の提供と助言:研究の精度を高め、包括的支援戦略のアプローチの示唆を得るため、研究の推進にあたり24年度にひき続き専門家の知識と助言を得ることにしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.アンケート調査、個別面接調査、フォーカスグループインタビューの実施に関わる研究費の内訳は次のとおり。①検討会議の開催経費、②調査実施経費(調査票印刷費、郵送費、雑役務費、面接調査交通費、インタビュー内容のテープ起こし)、③研究協力謝礼、④資料データ整理・分析のための雇用費、⑤専門的知識の提供の謝礼、⑥学会参加・発表経費、⑦その他雑費 2.研究費に係る実施内容:①新規調査用紙の作成・調査の実施:ア.リプロ領域の感染リスク知識意識に関する調査(新潟県内の生徒・学生、育児期女性)、イ.リプロ領域の感染管理実態調査(新潟県内の小規模病院、診療所、助産所)当該調査の研究費は本年度研究費を25年度に持ち越して実施する計画である。②面接調査の実施:体外受精を受けるHIV感染夫婦の女性の質的研究(全国地域の対象者:出産し育児期にある女性)、③リプロ領域(含新生児ケア)の感染対策のフォーカスグループインタビューの実施(産科婦人科病棟及び外来担当の看護師・助産師)、④上記所見に対する専門的知識の提供
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