研究課題/領域番号 |
24593357
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐山 光子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50149184)
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キーワード | 女性とHIV / リプロダクティブヘルス / ジェンダー / 女性の健康 / 助産師 / 感染管理 / 産科婦人科 / 助産ケア |
研究概要 |
本研究の目的は、助産師の立場から、①女性のHIV感染防止、②リプロダクティブケア領域の感染対策、③感染女性や夫婦、母子の支援に関わる包括的な支援モデルを構築することである。今年度は②について、エイズ拠点病院感染管理室、周産母子医療センター、産科婦人科診療所、中小病院の病棟・外来に勤務の看護職、地域開業助産師で構成した検討メンバーにより、3種類の調査票を作成した。リプロダクティブケア領域として(1)分娩介助・新生児ケア・乳房ケア(病棟)、(2)産科婦人科診療(外来)、(3)妊産婦新生児訪問・母乳ケア(地域)に着目して、業務の洗い出しを行い、調査票は一連の操作における感染リスクと感染管理の実態を把握する質問紙として構成した。乳房ケアと母乳の取扱に関してはHIV及びHTLV-1の感染知識とともに抗体陽性のカウンセリング意識を盛り込んだ。この調査票作成は、他診療科と異なるリプロダクティブケア領域の業務を感染管理の観点から点検し、助産師等の意識改革と具体的な改善策を導く根拠を与えるものとなっている。調査は感染対策の知識や情報が届きにくい中小病院・クリニックの看護職や地域の開業助産師を対象とするため、県の産婦人科医会、助産師会、看護協会、県健康対策課の協力を得た。調査の実施は次年度に予定。①と③は連動しており、③のHIV感染女性・HIV感染男性と非感染女性の夫婦を対象とした聞き取り調査から①の女性の感染防止対策を導くものである。しかし、女性感染者の研究協力者リクルート及び仲介者の確保は難しく、医療・社会的関心は男性同性間のHIV感染に集まっているため、NPOや医療関係者においても女性とHIV問題の認識は薄い状況にあった。そのことは逆に、本研究が目指す女性の人生とHIV問題の観点から、女性の声や経験を浮き彫りにし見過ごされている支援アプローチに注目する必要性を確信させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
調査は、24年度に研究倫理委員会の承認後、学生、一般女性、リプロヘルスケア関係者を対象とした質問紙を作成し実施予定であった。しかし、HIV調査は偏見、差別を招きかねないという専門有識者の指摘により、調査票の内容を点検し中止した。そのため、新たに調査用紙を作成するため時間を要する結果となった。また、HIV感染女性・感染者カップルの女性に対する面接調査も倫理的配慮を重視したため研究倫理審査委員会に修正計画を提出し承認に時間を要した。HIV感染女性や感染カップルの女性の研究協力依頼の照会は仲介者の存在が鍵となっている。しかし個人情報の保護と守秘義務の観点から仲介者の協力を得ることが難しくアプローチの方策を模索している。本研究は助産師による支援役割に焦点をあてているが、助産師と感染症の専門家、産婦人科医師の結び付きへの理解をもつHIV医療関係者は少なくHIV感染者・女性に対しても発信力が弱い。そのため、研究・連携体制は整備されたものの感染女性のリクルート、感染対策調査の実施ができず半年から1年弱の遅滞が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
1.26年度は研究成果のまとめの年度としていたが、25年度実施予定であった②リプロダクティブケア領域の感染対策調査を実施し、それと並行してフォーカスグループインタビューを組み込み、研究の進展を図る。 2.HIV感染女性及び感染カップルの女性に対するインタビューは、スノーボールサンプリングの手法によって研究力者のリクルートを行う。 3.研究成果による啓発活動「リプロダクティブケア領域のHIV感染管理と女性の支援」は、研究の進行段階に応じて、感染対策調査結果による助産師向けの研修会、フォーカスグループインタビューにより女性のHIV感染防止対策セミナー、最後にリプロダクティブケア領域におけるHIV感染女性の支援、の段階に分けた実施の方策とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究内容の見直しによる実施の遅滞により今年度に実施予定であった産婦人科医療施設勤務看護職及び開業助産師向けの調査(印刷・配付・集計)、フォーカスグループインタビュー調査(テープ起こし)、HIV感染女性のインタビュー(テープ起こし・出張旅費)が実施できなかった。そのため使用額は研究検討会議、資料・文献収集等の使途にとどまった。 25年度の未実施分については次年度での実施準備ができている。そのため研究計画の遅滞を取り戻す努力のもと、産婦人科医療施設勤務看護職及び開業助産師向けの調査(印刷・配付・集計)、フォーカスグループインタビュー調査(テープ起こし)、HIV感染女性のインタビュー(テープ起こし・出張旅費)を実施するため使用する。
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