研究課題/領域番号 |
24593357
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐山 光子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50149184)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | HIV / 女性 / リプロダクティブヘルス / 産科婦人科 / 感染対策 / 助産師 / 母乳 / 外来 |
研究実績の概要 |
1.リプロダクティブケア領域の感染対策実態調査 A県内「病院・診療所」の産科ケア業務者412名(回収数270),「産婦人科外来」の診察介助者110名,「妊産婦・新生児訪問」業務の地域助産師137名(回収数111)について,標準予防策の観点からそれぞれ血液体液曝露の部位と頻度,防護対策,感染認識に関する実態調査を実施した.全ての勤務場所で血液体液曝露頻度が高く汚染部位は多岐にわたり感染リスクの高い行動がみられた.特に外来,訪問業務は素手の行動が多く,さらに地域助産師の乳房ケア及び新生児ケアには特有の価値意識が存在し感染に無防備であった.B県,C県での追加調査結果も同様であった.当該領域での感染防御対策の必要性と緊急性が明らかとなり,包括的な介入戦略の方向性が導かれた. Ⅱ.HIV感染女性・妊婦,HIV感染カップルの面接調査 協力を得たHIV感染女性の複数者面接(2名,4名)及び個人面接(1名)を実施した.当事者が体験を物語るなかで見過ごされている女性特有の潜在ニーズを助産師の視点で抽出しリプロダクティブケアにつなげるため研究を継続中である.語りからはHIV感染者の産科ガイドライン(母乳禁忌)は医療面での感染対策が最優先であり,ジェンダー視点をもつ女性を主体とした助産師ケアの欠如が浮き彫りとなってきた. Ⅲ.包括支援戦略としての防止教育 感染対策調査結果をA県母性衛生学会で報告し注意関心を喚起し,併せて病院,診療所,地域,行政の助産師及び母性看護CNS,感染症認定看護師を構成員とする包括対策プロジェクトを立ち上げた.対策の立遅れが明らかな助産師の「妊産婦新生児訪問」での個人防護具の使用,意識改革への介入方策の検討に着手した.これらの知見は次年度にA県モデルとして全国の助産師職能団体への発信,国際助産師学術集会発表,日本母性衛生学会及び感染症学会等で報告予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
N県内の感染対策調査により看護者側のリスク状況が明らかとなり,女性のHIV感染者からは自発的な研究協力のコンタクトがとれて人数は限られているものの面接が可能になった.しかし,①感染対策調査はその結果から他県の状況の把握も必要となり追加調査にも時間を要した.そのため本年度中に着手予定の包括的な支援戦略の検討に遅れが生じた.②HIV感染女性の研究協力者確保は男性より難しくスノーボールサンプリングでコンタクトがとれるまで研究が進まず,さらに県内外在住の対象者との面接日程の調整や場の設定に時間がかかるため面接によるデータ収集に終わり分析結果の検討に遅滞が生じた.③以上の状況から今年度はほぼ計画に従って調査の実施,データ収集,結果の集計は実施したものの得られた知見について研究発表や論文報告にいたらなかったため,実施状況はやや遅れている.
|
今後の研究の推進方策 |
1.推進方策 今年度で調査が終わり包括的支援戦略検討のプロジェクトが立ち上がっているため,今後はプロジェクト活動として構成員が役割を分担し目的に従って研究を推進する.研究発表及び論文報告に重点をおいて研究作業を組織的に行い,調査結果・データ点検等を分担協働することによって研究精度を上げる. 2.研究計画の変更,遂行上の課題 本研究の問題点は「HIV」をとりあげて感染対策や感染者支援,防止戦略をテーマにしていることである.それ自体が社会・医療関係者にHIVへの偏見差別を生み出すことにつながる危険があるため質問紙の抜本的修正を実施した.感染者らはHIVへの偏見恐怖を強く感じていることから倫理的配慮に留意し信頼関係を重視するとともに,本研究はHIVに限らず全ての感染症対策の包括的支援戦略に力点をおく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
1.倫理的観点から感染対策調査を見直し全面修正を行った結果,調査の実施が遅れ次のステップの包括支援戦略検討が次年度に先送りとなったため経費執行が遅延した. 2.HIV感染女性及び感染夫婦の面接調査について多方面から研究協力者の募集を行ってきたが応募者が確保できず経過した.応募者とのコンタクトがとれた時期がすでに年度末であったため日程的に面接調査の実施が限られ,研究費を使用する活動ができなかった.
|
次年度使用額の使用計画 |
1.26年度で感染対策調査は実施済みのため包括的支援戦略のプログラム開発を行い,並行してHIV感染女性とのコンタクトがとれているため,スノーボールサンプリングにより協力者を確保し研究を実施する. 2.上記の成果をもとにリプロダクティブケア領域の包括支援プログラムとして啓発教材の作成,関係者向け研修会の開催,研究発表,論文報告を行う.
|