研究概要 |
研究初年度は妊婦健康診査で採血を受ける妊婦を対象に、酸化ストレス状態と主に脂質代謝、食事摂取状況および精神的ストレス状態を指標に横断的調査を実施した。 59名の妊婦から研究協力の同意が得られ、妊娠週数は8~37週であった。 血清中の酸化ストレス状態は、Reactive Oxygen Metabolites(d-ROMs値)と抗酸化力Biological Antioxidant Potential(BAP値)、尿中の酸化ストレス度は8-ヒドロキシ‐デオキシグアノシン(8-OHdG値)を指標とした。血清中d-ROMs値は525.3±121.7 U.CARR、BAP値は2021.7±272.5μmol/lであった。クレアチニン換算後の8-OHdG値(29名)は12.3±5.9ng/mg・CREであった。 d-ROMs値と他因子との相関をみると、妊娠週数(rs=0.47, p<0.01)、非妊時BMI(rs=0.27, p<0.05)、LDLコレステロール値(rs=0.36, p<0.01)、SOC総得点(rs=0.33, p<0.05)と関連が見られた。BAP値は、妊娠週数(rs=-0.71, p<0.01)、LDLコレステロール値(rs=-0.68, p<0.01)、HDLコレステロール値(rs=-0.30, p<0.05)と関連が見られた。尿中8-OHdG値については、特に明らかな傾向は見られなかった。食事調査について、酸化ストレス度や抗酸化力と食事摂取内容との関連はみられなかった。抗酸化力があるとされるビタミンCについて、質問紙調査による摂取量と血中濃度の関連は見られなかった。 今年度の結果から、妊娠週数と共に酸化ストレスは強くなり、抗酸化力は弱まることが明らかになった。また、酸化ストレス状態と脂質代謝や精神的ストレス状態との関連の可能性が示唆された。
|