研究課題/領域番号 |
24593400
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 日本赤十字秋田看護大学 |
研究代表者 |
阿部 範子 日本赤十字秋田看護大学, 看護学部, 講師 (90442011)
|
研究分担者 |
兒玉 英也 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30195747)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 遠位-近位部温度勾配 / DPG / 乳児 / 睡眠 / 概日リズム |
研究概要 |
乳児の眠気尺度として遠位-近位部温度勾配(distal-proximal skin temperature gradient:以下DPG)が有効であることと、DPGの上昇を促す背景因子について検証した。 月齢4~9ヵ月の乳児を対象とし、足と腹部の皮膚温の変化を継続記録し、DPGを算出した。また、足首にアクティグラフを装着し睡眠開始時刻を観察した。近位部皮膚温の平均値に経時的変化は見られなかったが、遠位部は入眠の10分後まで徐々に上昇し、その後は安定していた。乳児の眠気と共にDPGの有意な増加が見られており、遠位部皮膚領域の血管拡張と熱放出が、入眠に先行して起こっていると考えられた。 消灯時のDPGと、遠位・近位部皮膚温、主要な育児要因、入眠潜時(消灯から睡眠開始までの時間)との関係を検討した。 短い入眠潜時群のDPG曲線は、消灯後すぐに上昇傾向を示したが、長い入眠潜時群では上昇傾向は明確ではなかった。時間ごとに両群間を比較すると、消灯5分後において有意な差が見られ(p=0.049)、消灯15分後にはより明らかな差が認められた(p=0.008)。さらに消灯時にDPGが低かった児は、消灯後15分以内に-2.5℃以上に増加すると60%以上が30分以内に睡眠に入るが、消灯後15分以内でDPGが-2.5℃未満にとどまると、20%しか30分以内に入眠しなかった。消灯後最初のDPG上昇時刻と入眠時刻との間隔が極めて大きい場合、入眠潜時の有意な延長が認められた(p=0.0007)。 DPGが乳児の眠気尺度として使用できることが明らかになったことは、今後DPGを利用し、乳児の睡眠と光環境、母乳摂取との関係等、概日リズム形成に影響を与える可能性のある様々な因子との検討が可能となる。さらに入眠潜時との関連が明らかになったことから、DPG上昇による短入眠潜時の誘発の可能性を探る発展的研究につながる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度は乳児の入眠時のDPGの実態調査を行い、DPGの変化と入眠時間との関係、哺乳・入浴・消灯などの育児要因とDPGとの関係を明らかにすることを目的としている。児の眠気と共にDPGが上昇していくこと、DPGの上昇曲線の変化と児の寝付きに関連性が認められたことにより、当初の目的は達成できている。
|
今後の研究の推進方策 |
24年度の調査結果を受けて、25・26年度は計画通りに実施する。足を温めるなど、人為的にDPGを上昇させることにより、児の入眠が容易になるかどうかを検証する。しかし夏季に気温が上昇している場合は足を温めることによる遠位部皮膚領域からの熱放出が逆に阻害されないかどうか、成人を対象にプレテストを実施する。成人の場合、足を多少冷やすことが寝付きをよくする傾向にあることからも検討を行い、乳児のDPG上昇を促す方法として応用していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
25年度は平成24年度の結果を踏まえ、人為的にDPGを上昇させることにより、児の入眠を促すことが可能かどうか、検討する。 25年度の研究経費のうち、消耗品としてアクチグラフマイクロミニRC型/RR型、を1台購入する。靴下の着用等による入眠および睡眠覚醒リズムへの影響の調査のために乳児用靴下などを消耗品として購入する。 24年度研究の成果発表のため、ジャーナルへの投稿を行うことから、英語論文作成のための翻訳経費、また、24、25年度研究の成果を学会発表をする計画であり、旅費として使用する。
|