研究課題/領域番号 |
24593400
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研究機関 | 日本赤十字秋田看護大学 |
研究代表者 |
阿部 範子 日本赤十字秋田看護大学, 看護学部, 講師 (90442011)
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研究分担者 |
兒玉 英也 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30195747)
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キーワード | 遠位-近位部温度勾配 / DPG / 乳児 / 睡眠 / 概日リズム |
研究概要 |
25年度調査では遠位-近位部温度勾配(distal-proximal skin temperature gradient:以下DPG)と入眠潜時(消灯から入眠までの時間)との関連性をさらに追求するために、影響要因との関連を明らかにした。結果、室温20℃以上の環境下の場合の平均DPGは-3.50±1.65、20℃未満では-4.890±2.77であり両者に差はなく(p=0.054)、他の環境要因との関連も認められなかった。入眠潜時の有意な短縮が見られた、「消灯後15分でDPGが-2.5℃以上まで上昇した児」についても、乳児の週齢や、添い寝の有無などの育児因子との関連は認められなかった。 さらに2日連続のデータが得られた15例を検討した結果、乳児の1/3で、測定された夜によってDPGの上昇パターンが異なっていた。したがって、DPGの上昇パターンの違いは児に固有なものではない可能性が推測された。 同時に25・26年度調査では人為的に遠位部皮膚温、DPGをコントロールすることが乳児の寝付きに影響を及ぼすか否かの調査を実施しており、現在データ収集中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、ヒトの眠気の誘発には遠位-近位部温度勾配(DPG)の上昇が相関するが、概日リズムの発達途上にある乳児においても、DPGが眠気の尺度として有効であることを明らかにすることが第一の目的である。さらにDPGの上昇を促す背景因子を明らかにするとともに、人為的にDPGを上昇させることにより、児の入眠を容易にし、安定した概日リズムの形成に寄与できるかどうかを検討することが第二の目的である。 DPGが乳児の眠気の尺度となりうることを24年度調査で明確にしたが、さらにそのことを確認しつつ調査を深めている。 25年度までの調査により、乳児に関連する育児因子、環境因子ともに入眠潜時・寝付きの良さへの関連が認められなかったこと、さらにDPGの上昇パターンは児に固有なものではない可能性があることから、DPGはその時の児の遠位-近位部温度勾配そのものの影響を強く受けている根拠がさらに強まった。 現在これまでの結果をもとにDPGコントロールによる眠気の誘発の可能性を調査中である。調査協力者が当初の予定より少ない状況であり、協力が得られても、乳児の安全を確実に考慮した足の保温では十分な保温効果が得られず苦慮している。乳児の安全を第一に考え、母親が家庭で実施可能な、安全で有効な足の保温方法を今後も検討しながら調査を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
26年度調査は計画通りに実施する。25年度調査を継続し足を温めるなど、人為的にDPGを上昇させることが児の眠気を誘発するか否かを検証するが、さらに乳児への安全性を考慮した有効な足の保温の方法の検討も行いながら実施していく。下肢のマッサージによる保温効果も報告されており、本研究においても成人に対するプレテストでは保温効果が見られたことから、安全な方法としてさらに検証し、導入を考えていく。 乳児の睡眠時間や睡眠の質はアクチグラフを使用して評価しているが、これは下肢の活動量を基にした間接的な評価である。そこで、アクチグラフの下肢の活動量が実際にどれだけ乳児の睡眠の質を正確に評価しているのかを明らかにするため、アクチグラフと睡眠脳波の同時計測も行い、両者を比較したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度に購入を予定したアクチグラフマイクロミニRC型/RR型の購入を見合わせている。調査協力者がいっときに集中することがなかったこともあり、アクチグラフが滞ることなく使用することができたためである。 調査協力者の人数の集中度合いを見ながら、必要と判断された場合、再度アクチグラフの購入を検討する。アクチグラフによる下肢の活動量がどれだけ乳児の睡眠の質を正確に評価しているのかを明らかにするため、睡眠脳波の解析を行いたい。解析には業者の開発したプログラムが必要で、業者に睡眠脳波の解析を依頼するため、研究費を使用したい。
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