研究課題/領域番号 |
24593410
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 日本赤十字看護大学 |
研究代表者 |
谷津 裕子 日本赤十字看護大学, 看護学部, 教授 (90339771)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 出産イメージ / 20代女性 / 少子社会 / リプロダクティブ・ヘルス |
研究概要 |
本研究の目的は,わが国の20代女性が出産に対してどのようなイメージをもち,それがどのような過程で育まれてきたのかを,当事者への聞き取り調査と質的研究統合によって明らかにすることである。本研究を通して少子社会において20代女性が安心して妊娠・出産できる出産環境の創出に向けて必要な教育や医療、社会のあり方を提言することを目指す。 初年度である平成24年度は当初の計画通り,当事者への聞き取り調査を実施した。具体的には,研究代表者の所属機関における研究倫理審査委員会から承認を得た上で,関東地方在住の20代の未婚女性33名を対象に半構成的面接を1人1回ずつ実施した。研究参加者の内訳は,20代前半13名・20代後半20名,学生4名・社会人29名(うち大学および大学院卒25名,高校・専門・短大卒4名),独居17名・家族と同居15名・その他1名であった。得られたデータを質的に分析した結果,1382のコードが得られ,現在カテゴリー化を進めているところである。 コード数の多い内容には「怖いもの」「痛いもの」「大変なもの」「仕事との両立が難しいもの」「現実味がないもの」などが挙げられ,直感レベルのイメージと思考レベルのイメージとが混在していることがうかがえた。「現実味がないもの」には相手の男性がいない,仕事と出産・育児を両立する役割モデルが存在しない,ライフスタイルが出産・育児に適さないなどの語りが含まれており,仕事中心の生活が出産への忌避感に影響していると考えられた。一方で,「仕事より価値があるもの」「尊いもの」などのコードも少なくなく,全体的には出産・育児に対する肯定的イメージが強いこともうかがえた。こうした結果には,研究参加者が合計特殊出生率の低い都心の女性たちであること,高学歴の社会人が多く含まれていること,20代女性が育ってきた時代的背景などが反映されていることが推察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は出産イメージの多様性とその形成過程を明らかにすることにあるため,平成24年度の計画通り質的データをmaxim variation sampling(多様性が最大になる標本抽出法)により収集することを試みた。その結果,情報量に豊むデータを入手することができ,現在それらの分析を着実に進めているところである。 連携研究者5名,研究協力者1名と共にteam codingを実施するにあたり,各研究者が行った解釈の妥当性を確認する,全てのコードの抽象度を揃えるといった巧緻な作業が必要となる。分析精度を高め,よりよい結果を生むには拙速すぎない作業工程が鍵となるため,おおむね妥当で順調な進捗状況であるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,研究目的の達成に向けて分析作業を続けていく。具体的には,カテゴリー化を行い概念化を進めることによって出産イメージの多様性を明確化し,それらのイメージの出現傾向を把握する手法として内容分析を実施する予定である。さらに,出産イメージの形成過程を明らかにするためにcase studyを実施して,概念間の関係性を分析していく予定である。 平成26年度は,平成25年度までに明らかにした研究結果と先行研究の知見とを統合し,少子社会において20代女性が安心して妊娠・出産できる出産環境の創出に向けて求められる教育や医療、社会のあり方を明確化していきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の主な使途は以下3点に分けられる:①分析の際に必要となる文献の購入や複写費,②分析結果を関連学会で発表する際に発生する学会参加費や旅費,③研究協力者への謝金。研究を着実に前進させるため,研究費を計画的に有効に使用させていただく予定である。
|