本研究の目的は、わが国の20代女性が出産に対してどのようなイメージをもち、それがどのような過程で育まれてきたかを、当事者への聞き取り調査と質的分析によって明らかにすることである。本研究を通して少子社会において20代女性が安心して妊娠・出産できる出産環境の創出に向けて必要な教育や医療、社会のありようを提言することを目指す。 平成24年度は、研究倫理審査委員の承認を得た上で、当事者への聞き取り調査(関東地方在住の20代の未婚女性33名を対象とした1人1回の非構成的面接)を行った。 平成25年度は、データの質的分析(得られたデータを帰納的に分析し、コアカテゴリーをパターン・コード化して出産イメージの特徴を見出す)を行った。その結果、3の大テーマ、13のテーマ、88のコアカテゴリーが導き出され、20代女性の出産イメージを表す10の特徴が明らかとなった。 平成26年度は、本研究で得られた結果を先行研究や社会状況を示すデータと照合し考察した。研究参加者の約半数が出産に現実味を感じていなかったが、その背景には女性の過酷な就労状況、職場や地域社会における家族中心施策の未整備、仕事と出産を両立するロールモデルの不在、男女ともに出産の時期や方法を自律的に選択するための教育の不十分さが存在していた。これらの問題に取り組むことが、少子社会における出産環境の創出に向けた喫緊の課題と考えられ、本研究者の専門分野である助産学への示唆として、1.女性の出産・育児と仕事との両立に向けた政府や社会の動きを促進するように職能団体として賛同意思を表明する、2.日々の助産実践を通して育児に対する父母間の意識改革のきっかけをつかみ働きかける、3.子どもを見守るコミュニティ作りに助産師が積極的に関与する、4.ライフデザイン重視の性教育と性教育の生涯教育化、5.女性のライフステージへと開かれた助産外来、の5点を提言した。
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