我が国でも、早産・低出生体重児の「発達ケア(ディベロップメンタルケアDevelopmental Care;以下DC)」によるケアの質的改善の取り組みが行われるようになってきている。しかし、その取り組みは施設ごとでケアの内容や質に大きな格差がある。本研究は、我が国にDCのモデル施設を構築し、その効果を実証的に明らかにすることを目的とした。それにより、DCを推進することで、我が国の新生児医療の質の向上と、子どもの発達や親子の関係性の改善、さらに両親の育児支援の改善に結び付くことが期待できる。本研究の目標は、1)国内の母子周産期センターにおいて組織的にDCの教育トレーニングを行い、DCのモデル施設を構築すること、2)DCの効果を実証的に検証することである。 研究の成果は、1)日本ディベロップメンタルケア(DC)研究会を設立し、研究会を中心として、計11回のDCセミナーと、DCのケアモデルであるNIDCAP(Newborn Individualized Developmental Care and Assessment Program)によるDC教育トレーニングを開催した。これにより、我が国におけるDC教育の推進を図った。2)NIDCAPトレーニングに基づいたDCのモデル施設を国内5箇所(千葉市立海浜病院、東京都立墨東病院、横浜市立大学附属市民総合医療センター、愛仁会高槻病院、姫路赤十字病院)の周産期母子医療センター(NICU)に構築した。3)モデル施設におけるDCの組織的な取り組みが、対象児の神経行動発達、親のケア参加、親子の相互作用、ケアスタッフのケア技術や意識変化、DCの組織的な取り組みなどにおいて効果がみられた。4)研究成果をまとめとして、DCの理論と実践のための「標準 ディベロップメンタルケア・テキスト」(メディカ出版)を刊行した。 以上より、本研究は我が国の新生児医療におけるDCの理念、知識と技術の普及および発展に寄与することができた。
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