研究課題/領域番号 |
24593413
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
濱松 加寸子 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 教授 (20320997)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 潜在助産師 |
研究概要 |
平成24年度の目標は、1)1つの医療機関において開業助産師による早期家庭訪問を実施し、必要な助産技術項目を抽出する。2)潜在助産師の実態を把握し就業に関するニーズを明らかにする、ことであった。まず、目標1)を達成する前提として子育て支援が充実し出産による入院期間が短く、一方で早期家庭訪問が充実しているといわれるノルウェー、ホルダラント県、ベルゲン市で調査を行った。 結果、ベルゲン市での出産施設は、ベルゲン大学付属関連施設の1カ所で、市民のほとんどの出産を取り扱っていた。分娩方法は自然分娩が主流であるが、硬膜外分娩が35%と増加してきている。帝王切開率は11.9%であった。分娩入院期間は48時間であり、その間に母乳推進させている。退院後10日間の間に1~3回、地域に点在する助産師の訪問を受けることができる。子どもが就学するまでの6年間は保健師がフォローしている。ノルウェーでは日本のように産後1か月間はなるべく外出しないという文化はなく、退院直後より乳母車を引いて外出している。交流を求め、産後のエクササイズの目的で雨の日でも家に閉じこもることはない。そのため自らが何かあれば医療機関への受診行動ができている。医療機関に勤務する助産師や育児中の母親から、「子ども虐待」の概念はなく見たこともない、「お尻をたたくこと自体禁止されていて虐待は犯罪」という意識が浸透していた。 目標2)の調査結果、対象となる潜在助産師は20名だった。その中で助産師として再就職を考えている人は8名、「どちらともいえない」は8名だった。希望する雇用形態の約半数が正規雇用ではなくパートタイマーで、「子供が幼稚園や学校に行っている間だけ働きたい」、「子どもが帰宅する15時までに終了できる仕事」を望んでいた。新生児家庭訪問事業には16名中12名が関心をもっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は誰もが生き生きと、また楽しく子産み・子育てができる社会形成を目指している。そのため、医療機関と地域の開業助産師が協力する早期家庭訪問モデルの開発を試み、支援体制を構築していくことである。 目標1) 1つの医療機関において開業助産師による早期家庭訪問を実施し、必要な助産技術項目を抽出する、に関しては、具体的な助産技術項目の抽出の前に、早期家庭訪問が充実しているといわれるノルウェー、ホルダラント県、ベルゲン市で調査を実施した。助産師養成機関での助産師教育内容、出産施設で働く助産師の助産ケア、家庭訪問を実施している助産師による助産技術などを把握することができた。その結果、目標1)の早期家庭訪問に必要な技術項目が比較的焦点化されてきたため、次の調査に期待できる。 潜在助産師のニーズ調査では有効回答数は20と非常に少なかった。今回潜在助産師の定義を「現在、在宅で就業していない助産師。たとえば助産師の資格をもちながら保健師や看護師として、医療機関・行政・企業等、正規・非常勤・パート等で就業している人は含まない」とした。1大学の卒業生のうち連絡先が明確な408名に郵送した結果、96通が回収され、そのうち76名は就業しており結果20名であった。その数値が多いのか否かの判断はできないが、行政でも潜在助産師数を把握できない状況の中で貴重な材料となった。WLB(ワーク・ライフ・バランス)が盛んにいわれ推進しているようにみえる今日でも両立が難しく、働きたくても子育てに専念せざるを得ない社会環境であることが判明した。マンパワーを確保して子育て支援の充実を図り、一方で、看護専門職が両立できるための雇用形態を十分加味していく必要性を再認識した。
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今後の研究の推進方策 |
日本において分娩の集約化が進行しており在院日数が短縮化されている。その結果、母乳栄養の確立、育児技術の取得等が不十分の状況で退院している。一方、地域での最初の支援は出産後1か月前後の新生児家庭訪問事業であり、その間育児に対する不安を抱えたままの生活を送る母子の問題が顕在化している。今日、新生児家庭訪問は“こんにちは、赤ちゃん事業”と連動させている自治体もあり、ますます訪問日が遅くなる可能性もある。訪問がタイムリーに実施できない理由の大きな1つとしてマンパワーの不足がある。 誰でもが育児不安をもつ可能性はあり、それを自分で解決できない母親が増加している。退院直後より不安を抱く母親も存在し、現行の新生児家庭訪問事業をより早く、個々の母子のニーズに合わせたタイムリーな訪問活動を展開させていく必要がある。そのためには潜在化している助産師の活用である。WLBで仕事を希望する潜在助産師の存在が今年度の調査で明らかになった今後、早期新生児家庭訪問事業の必要性および潜在助産師活用の意義を高めるように進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.目標は、1)子育て中の母親の早期家庭訪問のニーズを明らかにする。2)早期家庭訪問に必要な助産技術内容を把握する。 2.調査対象は、1)浜松市のアロマケアスクールに通う母子30名、2)では、開業助産師3~5名 3.調査方法は、1)ファーカス・インタビューおよびアンケート調査を実施する。2)は、(1)開業助産師より家庭訪問に必要な助産技術項目を聞き取る。(2)開業助産師とともに家庭訪問に必要な技術項目を抽出する。(3)開業助産師とともに潜在助産師を対象とした教育プログラムを作成する。
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