研究課題/領域番号 |
24593415
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
横手 直美 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (10434573)
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研究分担者 |
鳥越 郁代 福岡県立大学, 看護学部, 准教授 (30217591)
山下 恵 中部大学, 看護実習センター, 助教 (70347425)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 緊急帝王切開 / 予定帝王切開 / 妊婦 / 適応 / 出産準備教育 / プログラム開発 |
研究概要 |
本研究では、緊急帝王切開(以下、帝切とする)に対する妊婦の適応力を高めるために、妊婦に対して帝切に関する包括的な出産準備教育プログラムを開発し、そのプログラムを用いた介入研究を実施することを計画している。 このプログラム開発に際しては、①日本人女性の特長や帝切に関するニーズおよび医療現場の現状を踏まえた内容、②妊婦の不安を過度に助長しないようによく構成された教育媒体を作成する、③実践現場で導入しやすいような形式でのプログラムとすることが重要である。しかし、日本では帝切経験者を対象者に含めた出産体験や満足度、周産期のニーズに関する大規模な調査はない。そこで、平成24年度は第一段階として、帝切経験者が妊娠中あるいは術前に得ていた帝切に関する情報や出産準備教育の実態を把握し、実際に経験後の満足度から今後のニーズや要望を探ることを目的にネットリサーチを行った。 その結果、予定帝切、緊急帝切各258名、計516名からの有効回答を得た。帝切に関する情報や出産準備教育に対する理解度・満足度は概して低くはなかったが、2群間の比較では、理解度・満足度ともに緊急帝切群のほうが予定帝切群よりも有意に低かった。医師または看護者による帝切に関する説明で、さらに充実させる項目としては、手術のリスクとその対応策(37.4%)、術後の心身の回復のめやす(33.1%)、手術の方法(30%)、なぜ帝切が必要かまたは適しているか(28.9%)の順に多かった。通常の出産前教育については、全体の56%が帝切に関する情報が「少しはあったほうがよい」、25%が「詳しくあったほうよい」と回答した。 以上から、緊急帝切経験者は予定帝切よりもネガティブな認識を持っていることが明らかになった。今後、今回明らかになった帝切経験者に充足が期待されている内容を吟味し、帝切に関する包括的な出産準備教育プログラムを開発する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題申請時の研究計画どおり、帝切経験者に対するネットリサーチを実施することができた。対象者の応募方法については、幅広い分娩施設の属性と地域特性のデータが得られるというメリットから、帝切経験後2年以内の女性に対して帝切経験者によって活用されている特定のサイトから研究協力者を募集する予定であったが、そのサイトにアクセスした者に限定されるため、対象者の背景や回答内容にバイアスが生じる可能性があり、本研究目的に適さないと判断し、全国にネットリサーチモニタを有するネットリサーチ業者を利用した。これによって、懸念していた問題を回避することができ、満足のいくサンプル数を確保できた。 分析の結果、本研究の意義を再確認でき、現状把握だけでなく、今後のプログラム開発に対しても大きな示唆を得ることができた。 また、分析結果についても予定通り、International Confederation of MIdwives(国際助産師連盟)の第30回3年毎大会(2014年開催)に一般演題としてエントリーした。以上から、本研究はおおむね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、本研究の対象として重要な存在である帝切経験後の経腟分娩を試行する(以下、TOLACとする)妊婦に対する出産前教育の内容を探求するために、TOLAC後に緊急帝切となった女性に対して面接調査を行い、その体験からニーズを抽出する。また、日本よりも帝切率が高く、帝切に関する出産準備教育が充実しているオーストラリアのRoyal North Shore HospitalにおけるCaesarean Birth Classを視察し、本プログラム開発の参考とする予定である。 平成26年度は、研究成果の還元と一般および専門職者からの意見をいただく機会として、「帝切分娩のケアと出産準備教育と考えるシンポジウム」(仮題)を開催する予定である。そしてこれまでの研究成果を総合して、緊急帝切に対する適応力を高めるための出産準備教育プログラムを開発する作業に入り、平成27年度に開発したプログラムを用いた介入研究を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年年度はTOLAC後に緊急帝切となった女性に対する面接調査実施にあたり、調査旅費、協力者への粗品、テープ起こし委託料が発生する。また、オーストラリアの病院およびCaesarean Birth Classの研究視察にかかる旅費・謝金、研究打合せ、学会発表のための旅費のほか、学会参加費、ホームページ更新料、消耗品として使用予定である。 なお、平成24年度の調査が効率よく進んだ結果、消耗品の支出が予定より少額となった。このため24年度に予定していた物品の購入は、平成25年度研究計画の予算と合わせて前半に使用することとした。
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