本研究の目的は、医療と学校が連携した子どもの復学支援プログラムを構築するための基礎的研究をすることである。1.本研究ではがんの子どもの理解を深め、復学が円滑に進むために小・中学校の教員を対象とした啓発のための研修会を継続して実施した。安城地区の病院の医師、看護師らと協同して平成25年度は一般の教員のみでなく、特別支援教育コーディネーターを対象とした。平成26年度は病院主催でスタッフ自身が積極的に自立した取り組みができるようになり、多職種参加のカンファレンス実施、復学支援マニュアルも作成された。2.復学支援する教員やクラスメートへの教育のためのプレゼンプログラムを検討することを目的としていた。そこでNYから持ち帰ったがんの子どもの母親の手記を翻訳した。この内容は母親の子どもが発症してから、退院・復学を果たし、日常生活に戻るまでの毎日の心理的変化が克明に記載されており、がんに罹患した家族の支援に役立つと考える。そこで、翻訳書が完成した後、共同研究者に配布してPRして頂くとともに、全国規模の学会でPRをした。書物の収益金はすべてがんの子どもを守る会に寄付した。また、復学支援した母子事例を面接調査結果をまとめ、学会および誌上発表した。医療者向け説明ツールを作成するために、充実した復学支援体制を構築している医師、看護師らを対象に面接調査を実施し、学会発表した。今後この内容をツールとして完成させる予定である。さらに、研修会を通して教員への啓発の重要性が明らかとなったが、現職教員のみでなく、教員を目指す学生の教育にも反映すべきとであると思われた。そこで、教員を目指す卒業前の学生に質問紙調査を実施して、特別支援教育や病弱児、がんに対する知識等の現状を調査した。その結果、今後何らかの形での教育の必要性が示唆された。卒前の学生、現職教員の啓発が特に重要であることが明らかとなった。
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