個人が健康に関する情報を適切に入手し、自らの状況に応じて利用することは、健康の維持・増進に有用である。ヘルスリテラシーとは、健康増進・維持に必要な情報にアクセスし、理解し、利用していくための個人の意欲や能力とされる。地域在住高齢者のヘルスリテラシーとソーシャルキャピタルに着目し、これらと活動能力との関連を明らかにすることを目的に実施した質問紙調査結果を分析し、以下の結果を得た。 活動能力の評価指標には老研式活動能力指標、ヘルスリテラシー(以下、HL)はIshiwaka et al.(2008)の尺度により、伝達的、批判的、機能的HLの各下位尺度を構成した。年齢を調整した重回帰分析(ステップワイズ法)の結果、活動能力に強く関連していた要因は、男性では、機能的HL、ソーシャルネットワーク、批判的HL、保健行動であり、女性では、保健行動、機能的HL、伝達的HL、ソーシャルネットワークであった(いずれも標準化係数が大きかった順)。活動能力、保健行動、機能的HLは年代が上がると共に低下する傾向にあったが、伝達的HLと批判的HLは、性・居住形態別による有意差はなく、80歳代までは年代が上がっても低下はなかった。また、いずれのHL下位尺度ともに、精神的健康感、保健行動に関連していた。高齢者のADL障害や高次生活機能低下の予知因子として多くの報告があるが、本調査結果より、高齢者の伝達的HL、批判的HLを考慮することは、高齢者の活動能力の保持または向上に有用であることが示唆された。なお、ソーシャルキャピタルは、ソーシャルネットワークとの関連があり、ネットワークを介しての身体活動への影響が考えられた。
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