本研究は質の高い地域保健活動を実践するための行政保健師の専門能力獲得プロセスの明確化と専門能力獲得支援を行っていくための効果的かつ実践的な研修プログラムを開発することを目的としている。 平成29年度は保健師の専門能力を高めるための要素として重視された「自己教育力」についてアンケート調査の分析の継続および結果の公表を行った。保健師の自己教育力と諸要因との関連では、職務経験として、保健事業等でのリーダー経験、プリセプター経験、職場の教育的環境として、リフレクションの機会、職場の勉強会、学習経験として、学会参加の経験、職場内外の勉強会への参加、職務に関するサポート環境として、住民・上司からの肯定的評価、同僚・上司からのサポート、刺激を受ける仲間の存在、モデルとなる保健師の存在、スーパーバイザー・相談できる人の存在が、いずれも「あり」の人が自己教育力得点が高く有意な差がみられた。属性との関連では、所属、年齢、保健師経験年数との関連はなかった。 また優れた地域看護実践経験をもち、自己教育力の高い保健師5名に対し、自己教育力の発展過程に関するインタビュー調査及び研修プログラムに対する意見聴取を実施した。自己教育力の発展過程として①社会や制度の変化という状況から保健所に求められる役割の変化を認識し、それを遂行していこうとする中で保健所保健師としてのあるべき姿を描き、仕事への発想が転換していくプロセスと、②言われるままに仕事を行っていた状況からそれに疑問を感じていく中で、自分自身の仕事への信念を確立・変化させ、変革に向けた行動化を図っていくプロセスが見いだされた。これらの結果から保健師の自己教育力の発展には、社会や状況の変化を察知するための意図的な働きかけ、定期的なリフレクション及び自己の役割認識を促進する機会の確保の重要性が明らかとなり、それらを加味したプログラムの見直しを図った。
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