研究実績の概要 |
本研究は、乳幼児健康診査や子育て相談の場で発達障害の可能性を危惧された「気になる子ども」と育児者へ支援における、保健師の家庭訪問を中心とした個別支援の特質を明確にし、発達障害の早期対応・子ども虐待防止のための指針を得る基礎的研究である。 五歳児健診を実施する先進地等で、母子保健活動を担う熟練保健師7名による個別支援過程において、1)保健師の意図と2)保健師の行為を面接調査した。保健師の意図295件、保健師の行為1,576件を記述・内容整理・分析し、支援内容項目として統合した。 すなわち、1)育児を今後どうしたいか語られるよう、信頼関係を形成する、2)育児を放棄する可能性も想定しつつ、育児者の対応能力を引出し、療育生活を継続できるようにする、3)育児者の児への肯定的な捉えを認め、正しい知識に基づいた療育対応ができるようにする、4)障害の診断時の気持ち、関係機関・職種に対する思いを受け止める、5)関係機関・職種の支援方針を理解して、より専門的な療育支援サービスを継続利用できるようにする、6)健診や予防接種、医療機関定期受診の機会を事後支援に活用する、7)ケア会議で関係職種と育児者とで支援の方向性を統一する、8)療育関係機関・職種へのつなぎ方と、適切な時期について検討する、であった。 これをもとに指針案を検討するため、リカート式と自由記述の質問紙調査で、郵送法により実践者の意見を把握した。東日本大震災被災地三県を除く全国市町村1,650の母子保健担当保健師に送付し740件(45.8%)の回答を得た。各項目で「自分もよく実施する」「実施したことがある」の平均回答件数(割合)は615件(83.1%)、「非常に重要と思う」「重要と思う」の平均回答件数(割合)は718件(97.0%)であった。本研究で検討してきた支援内容項目の重要性は概ね支持され、指針案として提案できる可能性があると確認した。
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