研究実績の概要 |
本研究の目的は、健康づくりの鍵である「地域への愛着」に着目し、旧農村地域における (1)自分や地域の健康づくり活動への参加を促す地域への愛着概念の意味内容とその影響要因を質的記述的に探究することと、(2)地域への愛着を測定する尺度を開発するである。 本年度は目的(1)に対して、自分や地域の健康づくり活動参加者が地域への愛着を形成するプロセスと、目的(2)に対して地域への愛着測定尺度を完成させた。 旧農村地域で自分や地域の健康づくり活動をしている向老期から老年期の人々へのインタビューデータを基に、自分の住む地域への愛着を形成するプロセスを継続比較法を用いて分析した。地域への愛着概念の分析では、文化的背景を鑑みた検討の必要性が指摘されていることから、本年度は、東日本と西日本での差異も検討しながら分析を行った。概念レベルでは東日本地域のみにみられる概念が存在したが、カテゴリーレベルでは同じカテゴリーが生成され、地域への愛着は、自分が住んでいる地域に《そこで暮らす生活》と、その地域に住む《人とのつながり》との相互作用によって育まれていく循環的な螺旋構造をを見出した。 尺度開発では、昨年度作成した尺度原案を用いて旧農村地域在住の55~75歳 2,054人を対象に郵送調査を行った。項目分析及び因子分析を行い『つながる安心』『わきおこる地域・人への思い』『かけがえのない地域』の3因子15項目からなる地域への愛着測定尺度に洗練した。理論的に関連があると考えられる変数(自然の中で過ごす時間、近隣づきあいの各項目、地域内信頼感、地域の健康づくりや福祉活動の頻度、健康関連QOL尺度の精神的健康度)との間に相関を認めた。尺度全体のクロンバックα係数は0.93であった。 今後、地域性や年齢層の異なる対象でも、同様のプロセスが確認できるかどうか検討していくことと、尺度の外的妥当性を高めていくことが必要である。
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