研究実績の概要 |
沖縄県U市の65歳以上の地域高齢者4,873名(男性2,166名,女性2,707名)を対象に,平成24年9月に郵送回収法にて自記式無記名質問紙調査を実施した。そのうち回答の得られた1,686名(回収率34.6%)のうち,有効回答の得られた718名(男性369名,女性349名)について検討を行った。解析は,心理学的ストレスモデルに従い,スピリチュアリティがストレッサー,ストレスコーピング,抑うつ傾向に影響しているという仮説モデルを共分散構造分析で検証した。その結果,心理学的ストレスモデルの抑うつ傾向へのプロセスにおいて有意な関連を認めたのは,情動焦点型コーピングと回避・逃避型コーピングであり,スピリチュアリティは,ストレスコーピングに有意な正の影響を示した。一方,スピリチュアリティのストレッサー,抑うつ傾向へは有意な関連を示さなかった。つまり,スピリチュアリティは,ストレス認知には影響しないが,スピリチュアリティが情動焦点型コーピングに影響した場合は,抑うつ傾向の軽減につながり,回避・逃避型コーピングに影響した場合は,抑うつ傾向の増強につながるというスピリチュアリティの抑うつ傾向への2つの側面の影響を認めた。本研究より,地域高齢者の身体的な衰えの心理的なストレスに対しては,回避・逃避型コーピングを選択せず,情動焦点型コーピングとスピリチュアリティを向上するための方法を習得することができれば,スピリチュアリティは精神的健康にさらに良い影響を与えることが示唆され,本研究は高齢者のストレス対策におけるスピリチュアリティの介入の新たな方策に寄与することが考えられた。 得られた研究成果は、学術誌に原著論文として掲載されており、今後の研究展開として現在、ストレッサーとしての「身体的衰え感に対する負担の有無」に焦点あて、心理社会的側面からその影響要因について解析を行っている。
|