研究課題/領域番号 |
24593446
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
丸谷 美紀 鹿児島大学, 医学部, 教授 (50442075)
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研究分担者 |
佐藤 紀子 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 教授 (80283555) [辞退]
雨宮 有子 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 准教授 (30279624)
細谷 紀子 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 講師 (60334182)
大澤 真奈美 群馬県立県民健康科学大学, 看護学部, 准教授 (50331335)
嶋澤 順子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (00331348) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 文化看護 / 生活習慣病 / ポピュレーションアプローチ / 保健師 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多様な地域で、保健師が生活習慣病予防のポピュレーションアプローチにおいて、どのような‘地域の文化’を、どのように活用し、評価しているか調査し、‘地域の文化’に即した生活習慣病予防のポピュレーションアプローチの展開方法を明らかにすることである。‘地域の文化’とは、「一定の生活圏域の住民に比較的共通する価値観・規範・信条と、その具現としての生活習慣」と定義する。 生活習慣病予防のポピュレーションアプローチを継続している地域で、事業展開(Plan-Do-See)に沿って、H24年度から3年間継続調査している。H26年度は、都市近郊2地域、地方都市1地域で調査した。年度当初は、前年度に学んだ住民のふるさと再生への思いを踏まえて地元意識を高めていくことや、世代を超えた共有財産として価値付けて事業拡大を図ることを計画していた。事業実施時には、他の地区と差別化できるようにしたり、居住年数や世代を超えて活動を共有することで結束力を高めたりしていた。一方で、住民の言葉の感覚に迎合しすぎないことを意識していた。年度末には、ヘルスケアシステムを幅広く再定義したり、住民が価値を置く活動評価の方法を見直していた。 H24年度からの4地域の変遷を概観すると、計画・実施において小地区の決まり事や生活時間等に則っている点等は、共通していた。事業の成熟毎では、事業拡大の時期は住民から健康づくりの意味を学び、事業成熟後の頓挫した時期は言葉の感覚に関する住民の知恵を借り、事業終結の時期には醸成されたつながりや価値観が受け継がれるようにしていた。 保健師が行う地域の文化に即したポピュレーションアプローチとは、健康指標の改善に留まらず、安全や環境を含め包括的にヘルスケアシステムを捕らえ、自身もその中で住民とと共に地域が健全に機能するよう、可視化・文言化されない規範や価値観を醸成するものといえよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、H24年度より4つの地域で3年間、生活習慣病予防のポピュレーションアプローチにおいて、保健師が、どのような‘地域の文化’を、どのように活用し、評価しているか質的縦断的に調査してきた。4つの地域とも、調査はほぼ計画通りに進行したが、1つの地域は事業が終結期にあり、H25年度で調査を終了した。 4つの地域の活動は、体操指導者を育成し、指導者の居住地区で運動を広めるという点で共通していた。4つの地域に共通して得られた結果は、体操指導者育成に関する文化的能力、体操指導者が体操グループを創設したり運動を普及する際に用いる文化的能力、体操を市内の地区へ波及する際に用いる文化的能力が得られた。また、4つの調査地域では、事業の拡大期、成熟期、終結期にあり、それぞれに特徴的な事業の広め方、成熟期の乗り切り方、終結期の意味づけなどを得ることができた。 調査の過程で、研究の厳密さを確保するため、H25年度は文化人類学者の助言を得た。H25年度末に海外の研究者を招聘し助言を得る予定であったが、助言者の事情により来日はせずにメール審議をした。 研究の公表は、H25年度に3本、H26年度に3本を、学術集会にて経過を報告し、聴衆との質疑応答を通じて多大な示唆を得ることができた。 3年間の調査を踏まえ、4つの地域ごとの分析を統合する必要があり、H27年度は分析の統合と研究成果の公表を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
今回のH24年度からの調査は、関東近郊の4つの地域に限定されていた。今後は、過疎地域や、夜間人口が少ない地域等、多様な地域で調査を行い、知見を充実させる必要がある。 また、今回の調査では、ポピュレーションアプローチの内容は、主として運動普及のプログラムであった。それぞれに、事業の拡大期、成熟期、終結期と特徴を得ることができ意義ある結果となった。しかし、運動以外のポピュレーションアプローチにも着目し、調査をしていく必要がある。 さらには、保健師の活動は、自治体の基本構想など、上位の政策に影響を受け、政策へ提言することも保健師の重要な役割である。政策は新たな価値観の創出過程であり、また文化システムに影響されている。保健師がポピュレーションアプローチを政策にどのように反映し、明文化された価値体系としての政策提言に寄与しているか明らかにすることも今後求められる。
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次年度使用額が生じた理由 |
4つの地域における3年間の調査はすべて終了し、分析も地域ごとには終了した。4つの地域ごとの分析結果を統合し、厳密さを確保するために助言者を交えて研究会議を開催する必要があったが、助言者の都合により平成27年度に開催が延期となった。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度前期に4つの地域の分析結果を統合するために、研究者会議を開催する。その後、助言者を交えて会議を開催し、分析結果の厳密さを検討する。検討後、研究成果公表に向けて、分析結果を見直すとともに、公表資料作成、論文作成等を行う。
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