研究課題/領域番号 |
24593449
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研究機関 | 岐阜県立看護大学 |
研究代表者 |
藤澤 まこと 岐阜県立看護大学, 看護学部, 教授 (70336634)
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研究分担者 |
黒江 ゆり子 岐阜県立看護大学, 看護学部, 教授 (40295712)
原田 めぐみ 岐阜県立看護大学, 看護学部, 助教 (80448696)
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キーワード | 退院支援 / 利用者ニーズに基づく支援 / 人材育成モデル |
研究概要 |
本研究では、利用者ニーズを基盤とした退院支援の質向上に向け、二次医療圏を利用者のニーズに対応するための多職種連携が可能な領域と捉え、圏域の退院支援の課題を明確にし、課題解決に向けた「退院支援教育システム」の施行に取り組む。本研究における「退院支援教育システム」とは、医療機関での「退院支援研修プログラム(講義、訪問看護ステーションでの実施研修、退院支援担当部署での実施研修、退院支援の取り組み・事例検討、リフレクションを含む)」の遂行と、圏域での定期的な退院支援検討会の運営等を含む。 平成25年度はA医療機関において「退院支援研修プログラム」を試行した。退院支援に関する委員会のメンバー8名が当該研修に参加し、大学における講義・ワークショップを受講した後、訪問看護ステーション、退院支援担当部署での実地研修を実施し、その後自部署において退院支援に取り組み、事例検討を行った。そしてグループインタビューにより取り組みの成果を把握し、圏域での退院支援検討会を開催して共有した。「退院支援研修プログラム」試行による成果として、講義・ワークショップの受講により退院支援に必要な知識を修得することができ、実地研修により退院支援における利用者ニーズを理解する機会となるとともに、訪問看護師や退院支援担当部署の看護職者の役割の理解につながった。そして自部署の退院支援に取り組み、事例検討において支援内容を振り返ることにより、自施設の退院支援の課題抽出につながった。また、段階を踏んで取り組む中で、患者・家族への関心が高まり、入院時からの支援の必要性や連携の重要性が理解できていた。今後行うリフレクションも含め、「退院支援研修プログラム」の施行は、利用者ニーズを基盤とした退院支援の質向上に向けた人材育成モデルの開発につながると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、利用者ニーズを基盤とした退院支援の質向上に向け、二次医療圏内の退院支援の課題を明確にし、課題解決に向けた「退院支援教育システム」を施行し、利用者ニーズを基盤とした退院支援が実践できる看護職者を育成するための人材育成モデルの開発に取り組む。 平成24年度はA医療圏をモデル医療圏と設定し、A医療機関を含む圏域の8つの医療機関を対象にインタビュー調査を実施し、圏域の退院支援の現状・課題を共有するための退院支援検討会を開催した。その意見より把握された圏域の退院支援の課題として、①入院時からの退院支援の取り組み、②多職種による連携、③病棟看護師の知識・意識の向上、の3点が明確になった。 25年度は上記課題の解決を目指し、大学における退院支援に関する教育プログラムの内容の充実を図り、A医療機関において「退院支援研修プログラム」を試行した。研修参加者の学びとしては、大学での講義・ワークショップを受講し、退院支援の必要性や早期からの取り組みの必要性、多職種連携の必要性が学べており、講義内容を自部署のスタッフに周知することにより、退院支援に関する意識の向上にも結び付いていた。また訪問看護ステーションでの実地研修は、入院患者を生活者として捉えることの重要性が学べ、在宅での療養生活のイメージができ、病棟での支援の振り返りの機会となった。退院支援担当部署での実地研修では、当該部署の看護職者の役割と、当該部署の看護職者の協働の必要性が学べていた。事例検討では、よりよい支援方法や連携の必要性等が検討され、院内での退院支援体制の構築に向けた検討にもつながった。 「退院支援研修プログラム」の継続的な施行は、研修参加者の知識・意識の向上、看護職間の連携・協働、院内の退院支援体制の整備にもつながることが明確となり、今後の利用者ニーズを基盤とした退院支援の質の向上に向けた人材育成につながると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降も、A医療機関において「退院支援研修プログラム」の施行を継続する。次年度は退院支援に関する利用者ニーズをより明確にするために、研修参加者の退院支援を受けて退院した患者・家族への聞き取り調査を行う予定である。また、次年度のリフレクションの実施をもって平成25年に開始した「退院支援研修プログラム」の試行が修了するので、一連の研修プログラムの成果・課題を明確にし、改善に向けて検討する予定である。 A医療機関では関連施設に訪問看護ステーションが含まれており、実地研修等が円滑に行えた。しかしA圏域の他の医療機関では「退院支援研修プログラム」の施行にあたっては、別組織の訪問看護ステーションとの連携が必要となる。そこで、自施設の関連施設にに訪問看護ステーションを含まない医療機関の「退院支援研修プログラム」の施行に向けて、対象となる医療機関を選定し、施行に向けて検討する予定である。 A圏域での複数の医療機関での取り組みに発展するよう、圏域内での退院支援検討会を継続的に開催して成果を共有する機会をもつことで「退院支援教育システム」の構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究対象となるA医療機関に複数回出向く際の旅費を計上していたが、A医療機関との複数回の事例検討等の会議は、TV会議システムを利用して行ったため、旅費が執行できず次年度使用額が生じた。また本年度図書の購入もできていないため当該助成金が生じた。 次年度は必要な図書を購入する。また本研究の途中経過をまとめて学会報告を行う。その際の学会費、旅費に当該助成金を使用する。次年度はA医療機関の研修参加者より退院支援を受けた複数名の患者・家族へのインタビューを行うため、その謝礼、旅費に当該助成金を使用する。またA圏域の別の医療機関での「退院支援研修プログラム」の試行を検討し、その打ち合わせ等にA圏域に出向く機会が増え旅費を使用する予定である。A圏域で「退院支援研修プログラム」の成果を共有する「退院支援検討会」開催の経費としても当該助成金を使用する予定である。
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