研究概要 |
児童虐待の再発 予防に対する具体的、かつ効果的対応策の現状は十分に明らかにされていない。本研究の目的は、児童虐待の再発防止(3 次予防)の観点から、1.全国児童相談所の親子再統合 に関する調査を行うこと。2.前向き子育てプログラムの導入とその有用性の評価の2点である。 平成24年度は全国児童相談所225か所にアンケート調査を行った。回収は127か所(56.4%)であった。新規児童虐待相談件数は22年度(5児童相談所:3,855例)、23年度(122児童相談所:32,089例) の計35,944例であった。一時保護したのちの処遇は、自宅52.2%、里親3.6%、自宅以外親族1.5%、児童福祉施設入所中26.9%、一時保護施設入所中8.3%、入所解除6.8%、その他0.6%であった。児童相談所における対応は、面談による指導や家族支援プログラムが多くの児童相談所で行われ、その対象は両親が望ましいが現状はほとんどが母親への対応であった。現在行われているペアレンティングは、コモンセンスプログラム、My Treeペアレントプログラム、ペアレントトレーニング、完璧な親なんていない、トリプルPなどが試みられていた。また、介入型虐待ソーシャルワークの枠組み(サインズオブセーフティズアプローチ)も多くに相談所で採用されていた。 アンケート結果からトリプルPに関心を示した児童相談所のうち、次年度にプログラム実施を希望している6か所の児童相談所において、トリプルPの詳細な説明を行ったのちプログラム実践に向けての意見交換を行った。
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今後の研究の推進方策 |
子育て支援プログラム(トリプル P )の実施と評価を行う。児童相談所 6か所について、地域のニーズに応じてA 群(グループ標準トリプル P 実施群)、B 群(グループ SSTP 実施群)を設定する。A 群のスケジュール は1 セッション 2 時間×8 週間(5 回のグループセッション、3 回の個別電話相談)である。 B 群のスケジュールは1セッション 2.5 時間×9 週間(6 回のグループセッション、3 回の個別電話相談)である。 ともに、5-10 名の母親グループで実施する。効果の測定は①プログラム実施直前、②プログラム実施直後、③プログラム実施 3-6 カ月後に質問紙調査を行い、プログラム短期効果およびプログラム持続効果(長期効果)の測定を行う。質問紙は、サンダースらがプログラム効果測定に用いたものに準拠し、従来の国外の研究とも比較可能となるように質問紙を選択する。 以下列記するが、研究参加者の負担とならないように工夫する。子どもの状態は、① アイバーグ子ども行動調査票(Eyberg&Pincus, 1999)、② 発達行動チェックリスト(Einfeld&Tonge,2002)③ 子どもの長所短所調査票(Goodman,1997,1999)などを用いる。親の状態は、① 子育てスキル(Arnold,1993)、② 子育ての自信(Sanders&Woolley,2005)、③ 親の精神状態:うつ、不安、ストレス(Lovibond,1995)、④ 夫婦間の質指数(Norton,1983)、⑤ 子育て意見の衝突の程度(Dadds&Powell,1991)⑥ 両親の怒りの感情調査票(Hansen&Sedlar,1998)、⑦ 両親の虐待ポテンシャル(Milner,1986)、⑧ プログラム満足度調査(Sanders, 2000)などを用いる。
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