研究実績の概要 |
本研究は、養護教諭が保健室で行っている傷病の緊急度・重傷度判断事例を収集し、緊急度・重傷度の高い事例を見逃さないためのエビデンスを集積、そのエビデンスを用いて判断支援ツールを検討することを目的としている。 平成26年度は養護教諭3,200名に対して、「養護教諭が体験した重症例と判断根拠(調査1)」および「養護教諭が行っている判断力向上のための方法と自信度(調査2)」の2つの質問紙調査を行った(配布数3,200枚、回収数908枚(回収率28.4%)、有効回収数888枚(有効回収率97.8%))。回答者の養護教諭経験年数は平均19.4±12.47年であった。 調査1において、保健室で手当をする頻度が高い5傷病(頭部外傷、四肢外傷、腹痛、頭痛、アレルギー)の重症事例ごとに養護教諭が判断根拠とした視点を分析した結果、医学的に重視されている情報のみではなく、問診や視診から比較的容易に入手できる情報を重症度や対応を判断するための根拠として用いていた。また、「痛み」に注目している事例も多かった。 調査2において、養護教諭が行っている判断力向上の方法として自信度との関連がみられたのは、「他者からのフィードバック」(経験年数10年以下の養護教諭で有意差あり)と「自己学習ノートを用いた振り返り」(20年以上30年以下の養護教諭で有意差あり)であった。 これらの結果から判断支援ツール作成への示唆として、以下の2点が明らかになった。1)本研究で得られた養護教諭の経験の中から見いだされた視点に基づいた判断基準を用いる。2)自信を持って判断できるようになるためには、1人で学習しようとするのではなく、他者からの意見が得られるように努力するとともに、事例検討会などを通じて、他の養護教諭や専門職から意見をもらうことが大切であるといえる。これらのことをふまえた判断支援ツールの検討が必要である。
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