研究課題/領域番号 |
24593467
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
杉田 由加里 千葉大学, 看護学研究科, 准教授 (50344974)
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研究分担者 |
石川 麻衣 高知県立大学, 看護学部, 講師 (20344971)
松下 光子 岐阜県立看護大学, 看護学部, 教授 (60326113)
石丸 美奈(坪内美奈) 千葉大学, 看護学研究科, 准教授 (70326114)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 行政保健師 / 業務研究 / Evidence based practice |
研究概要 |
本研究の目的は,保健師が,日ごろの活動の評価や発展を目指し取り組んでいく業務研究を支援する教育研究機関の研究者が関わる,所属組織の支援体制の充実を含む業務研究サポートモデルを開発することである.24年度は,保健師が日頃の活動の評価や発展をめざし取り組んでいる業務研究の実態と,業務研究を実施するうえでの促進要因を明らかにすることを目的に,業務研究を推進していくサポートモデル開発への基礎資料を得るために,全保健所への実態調査を実施した. 調査対象者は,都道府県・政令指定都市・中核市・保健所政令市・特別区の保健所全数495か所にて,保健師業務を統括する保健師,各保健所1名,計495名.調査方法は郵送法による無記名の自記式質問紙調査とした. 有効回答281件(有効回答率56.8%).内訳は,都道府県型213件(75.8%),政令市20件(7.1%),中核市26件(9.3%),保健所政令市6件(2.1%),特別区11件(3.9%)であった.204件(72.6%)が業務研究に取り組んでいたが約3割が取り組んでいなかった.取り組みの有無と所内外のサポートと有意に関連があり,特に所内のアドバイザーの存在と関連しており,所内外のサポートがあることで業務研究の取り組みは促進し,所内のアドバイザーの存在が業務研究を促進する上で重要と考えられた.県レベルで発表することと事業計画,事業評価,課題の明確化,人材育成に役立つこと,全国レベルの発表と事業評価,人材育成に関連が見られた.また,研究プロセスの文献収集,研究方法の設定,データ分析,報告書の作成に関して,強化したいスキルであり希望するサポートでもあった. サポートは業務研究のほぼすべてのプロセスで希望しており,業務や人材育成に役立つと思えるには,業務研究を発表する段階まで到達できるサポートが必要と考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,全国の看護系大学の公衆衛生看護分野の教員と保健所双方への実態調査から,現職の保健師の研究に関するサポート状況や,研究への取り組み状況といった業務研究に関する実態を明らかにするために,自記式郵送法による実態調査を実施する予定であった.しかし,各大学が教育活動の中で実施している研究指導との区分けが難しいのではと考え,大学への調査は中止とした.また,保健所への調査は,研究班メンバーが所属する近隣の都府県の保健所としていたが,全数調査とし,全国の保健所の業務研究への取り組み実態を明らかにする内容へと変更した. その結果,3割の保健所が3年間(平成22~24年度)で業務研究への取り組みがなく,取り組んでいる保健所では,所内外のサポートがあることが有意に業務研究に取り組んでいるといった実態が明らかとなった. また,業務や人材育成に役立つと思えるには,業務研究を発表する段階まで到達できるサポートが必要であり,そのサポートは,業務研究のほぼすべてのプロセスで希望しているといった実態が明らかとなった. 本研究の目的である業務研究を推進していくサポートモデル開発への有益な資料を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
25年度(2年目)は,アクションリサーチの手法を参考に,研究指導を本研究の代表者および分担者が実施し,業務研究サポートモデル案を作成する. 1)24年度に実施した調査結果から具体的支援の希望を確認し,目指すべき目標として,例えば26年度に学会で報告するといったゴールを定め,アクションリサーチの手法を参考に,研究指導を展開する.(1)指導者は2人体制とし主担当とサブ担当とする.各自1~2事例,計4~5事例程実施する.(2)保健師や同僚および上司,教員側の業務研究に対するイメージの共有化を図るために,研究指導を開始する前に,研究開始時の講義(「実践家が実施する研究とは」(仮))を実施する.(3)指導した内容やその時に意図したこと,保健師本人だけでなく,周囲の同僚や上司へのかかわりもフィールドノートに記述していく.可能な限りICレコーダーに録音し,逐語録とする. 2)業務研究サポートモデル案を作成する.フィールドノート,逐語録のテキストデータから,事例ごとに,どのような点に保健師が戸惑い,それに対してどのように教員が関わったか,研究を推進していく上で教員が同僚や上司へどのような働きかけをしたかといった視点で,時系列に整理した後,全事例を統合し,業務研究サポートモデル案を作成する. 研究代表者は,自身も研究指導を実施するとともに,全員の進捗管理と定期的なミーティングやメールのやり取りを積極的にとり,情報の共有化に努める.分担研究者は,研究指導を実施する.研究代表者が企画する定期的なミーティングに参加するとともに,気づいた点を積極的にメールに載せるようにする.連携研究者は,研究指導にサブ担当として参画し,研究指導を実施する.定期的なミーティングに参加するとともに,気づいた点を積極的にメールに載せる. 26年度(3年目)は,25年度に実施した業務研究を学会発表できるようにサポートしていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として,プリンターのカートリッジや紙,ボールペン,ファイル等,また,関連書籍を購入する.本研究に関連する国内外の資料(文献)を必要時,随時入手する. 国内旅費として,研究の打ち合わせを年度に2回,研究代表者の所属施設で実施する.1回につき,施設外研究分担者(2名)の旅費として平均5万円,連携研究者(2名)の旅費として平均5千円として計上する.研究代表者,分担研究者および連携研究者の本調査費を計上する.研究代表者が,本研究に関連する研究成果発表(平成25年8月),および資料を収集するための旅費として,計10万円,計上する. 資料収集および整理のために,研究代表者の研究補助者の謝金を計上する. 研究の打ち合わせを年間2回予定しており,その会議費を計上する.また,研究指導内容を録音し,テープ起こし代を計上する. 未使用額(444,206円)については,当初,保健所への実態調査からさらに詳細にヒアリング調査を実施する予定であった。しかし,研究代表者が所属機関を異動した経緯もあり,24年度中に準備を十分に整えることができなかったために、25年度に実施することとした。上記の未使用額には,24年度に分担金として配分した金額(15万円)も含んでおり,25年度に執行することとする.
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