研究課題/領域番号 |
24593467
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
杉田 由加里 千葉大学, 看護学研究科, 准教授 (50344974)
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研究分担者 |
石川 麻衣 高知県立大学, 看護学部, 講師 (20344971)
松下 光子 岐阜県立看護大学, 看護学部, 教授 (60326113)
石丸 美奈 (坪内 美奈) 千葉大学, 看護学研究科, 准教授 (70326114)
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キーワード | 行政保健師 / 業務研究 / Evidence based practice |
研究概要 |
本研究の目的は、保健師が、日ごろの活動の評価や発展を目指し取り組んでいく業務研究について、教育研究機関の研究者等の外部支援内容や体制、所属組織の支援体制の充実を含む業務研究サポートモデルを開発することである。 平成24年度に実施した、保健所保健師の業務研究への取り組みの実態と業務研究を実施する上での促進要因について、保健所の保健師業務を統括する立場にある保健師への郵送法による自記式質問紙調査より以下の点が明らかとなった。業務研究を推進していくには,主担当者として積極的に業務を評価し課題を見出す視点を持つことが必要であり,それには本人の意欲が影響している。この意欲を支えるために,統括保健師は研究に取り組みやすい職場環境をつくること,保健所は業務研究を遂行しようという職場風土を醸成すること,本庁は学会等の参加予算の確保,大学は助言・指導者としての役割を果たすことが必要であった.研究スキルの獲得には,統括保健師は所内外の助言者とのネットワーク構築・調整,本庁は発表の機会を含む業務研究にかかる研修の実施,大学は支援窓口や支援内容の公表をはじめとした共同研究できる体制を構築していくことが必要であった. 平成25年度は前年度の調査の結果から、さらに詳細な調査が必要と判断し、継続的に業務研究に取り組んでいる5保健所の保健師業務を統括する立場にある保健師へのインタビュー調査を実施した。継続的に業務研究を推進することができた条件についてより詳細に明らかにした。 そして、5ヵ所の自治体で業務研究支援を開始することができた。3ヵ所の自治体で、学会あるいは研究会で発表まで実施することができ、1ヵ所の自治体ではデータ収集まで実施でき、1ヵ所の自治体は研究計画書を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度に実施した全国調査は郵送調査であり、業務研究サポートモデルを開発する上でさらに詳細な調査が必要と判断し、平成25年度は、継続的に業務研究に取り組んでいる5保健所(県型保健所2ヵ所、政令指定都市1ヵ所、中核市2ヵ所)の保健師業務を統括する立場にある保健師および業務研究を推進する上で責任のある立場の保健師へのインタビュー調査を実施した。この調査は、当初の計画にはないものであったが、本研究のめざす、業務研究サポートモデルを開発する上で、以下の有益な知見を得ることができた。業務研究を継続的に推進していくには、発表することを前提に業務研究に取り組むことが重要であり、主担当者を決めてからテーマを設定するより、複数の関係者が検討する中で主担当者やテーマを決めることでその時の状況にあった業務研究となっていると考えられた。業務研究の推進には、保健所長やリーダー保健師のサポートが必要であり、このサポートにより組織として取り組む業務研究になり得ていると考えられた。 そして、計画書のとおり、保健師が所属する組織の支援体制の充実を含む業務研究サポートモデルの開発に資する、保健師の業務研究への取り組みを教育研究機関の研究者が支援する中で、業務研究を推進する要因を明らかにするために、5か所の自治体で研究支援を開始し始めた。 平成25年度内に3ヵ所の自治体で、学会あるいは研究会で発表まで実施することができ、1ヵ所の自治体ではデータ収集まで実施でき、1ヵ所の自治体は研究計画書を作成中である。研究支援が終了した3ヵ所の自治体の研究支援中のフィールドノート、研究の中間点(抄録提出後)と終了時(発表後)におけるインタビューの逐語録を分析中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、25年度に実施した、継続的に業務研究に取り組んでいる保健所の保健師業務を統括する立場にある保健師へのインタビュー調査の知見を踏まえながら、さらに多様な事例へのインタビュー調査を実施する。具体的には、25年度に明らかになった研究成果を研究参加者に提示し、さらに加筆・修正する点はないかという内容のインタビュー調査を実施する。業務研究を業務内容の充実や人材育成に効果的に活用するための業務研究を推進する条件について明らかにし、業務研究を推進できる体制について明らかにする。 そして、25年度に引き続き、研究支援を実施する。25年度より支援している2自治体への支援を継続し、研究の中間点(抄録提出後)と終了時(発表後)におけるインタビューを実施する。さらに、業務研究を計画中あるいは取り組みだしている中で支援が必要と考えている自治体の保健師を2自治体程度リクルートし、研究支援を開始する。特に今年度は、研究計画書の作成、発表後の業務への活用の具体を丁寧に支援していく予定である。 以上から、業務研究のノウハウを活用し、日ごろの実践の充実や改善、保健師の専門性の向上を目指した、教育研究機関の研究者の活用を含む、その保健師が所属する組織における研究に取り組む体制の構築・充実も考慮した業務研究サポートモデルを開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、研究代表者および研究分担者で、最低1ヵ所の自治体への業務研究サポートを実施する予定であったが、研究分担者1名が研究サポートまでこぎつけることができず、計上していた旅費やテープ起こし代を執行することがなかった。 平成25年度に実施した、保健師業務を統括する立場にある保健師および業務研究を推進する上で責任のある立場の保健師へのインタビュー調査であるが、年度末に実施することとなり、研究参加の同意を得ることができたが、25年度内に調査の日程を設定することができず、26年度に調査を実施する自治体が生じた。よって、この調査にかかる旅費やテープ起こし代の予算を執行することがなかった。 平成26年度は、前年度に業務研究サポートを実施できなかった分担研究者が、業務研究サポートを実施し、旅費やテープ起こし代を執行していく予定である。 平成25年度に実施しきれなかったインタビュー調査を平成26年度はさらに内容を充実し、実施する予定である。現在、5ヵ所の自治体よりインタビューの内諾を得ており、旅費やテープ起こし代を執行する予定である。
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