研究課題/領域番号 |
24593467
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
杉田 由加里 千葉大学, 看護学研究科, 准教授 (50344974)
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研究分担者 |
石川 麻衣 高知県立大学, 看護学部, 講師 (20344971)
松下 光子 岐阜県立看護大学, 看護学部, 教授 (60326113)
石丸 美奈(坪内美奈) 千葉大学, 看護学研究科, 准教授 (70326114)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 行政保健師 / 業務研究 / Evidence based practice |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、保健師が日頃の活動の評価や発展を目指し取り組んでいく業務研究について、教育研究機関の研究者等からの外部支援の内容や体制、所属組織の支援体制の充実を含む業務研究サポートモデルを開発することである。本研究では、業務研究を、日頃の活動の評価や発展のため、保健師個人としてだけでなく組織として実施する、実践の改善をめざした研究活動とする。 平成26年度は前年度に引き続き2本の研究に取り組んだ。1つは、地域保健法において研究を推進する行政機関とされている保健所において、保健師が日頃の活動の評価や発展をめざし取り組んでいる業務研究を継続的に推進していく体制を明らかにする研究である。研究参加者は10保健所(県型保健所7ヵ所、政令指定都市1ヵ所、中核市2ヵ所)における13人であった。全保健所とも3年間で複数回の発表、報告書を作成していた。業務研究を継続的に推進していくには、業務研究の主担当者やテーマをスタッフや上司と一緒に決めるというプロセスを経ることが必要であった。主担当者の業務研究に取り組む熱意や同僚職員の業務研究への直接的な関わり、保健所長の業務研究への理解、リーダー保健師の業務研究への積極的な関わりといった条件を満たす体制がつくられていた。さらに県本庁が発表の場を設定し、自治体間で情報交換を図ることができること、大学教員等の外部の研究者による業務研究へのサポートがあるといった、体制づくりにおける保健所外の条件も明らかとなった。 そしてもう1つの研究として、業務研究支援を5ヵ所の自治体で実施した。全自治体とも学会あるいは研究会での発表まで実施することができた。業務研究支援の中間時と発表後の終了時に、業務研究を実施する上での推進要因に関し、主担当者及び一緒に関わった同僚へのインタビューを実施した。平成25年度に実施した3ヵ所と合わせ、計8自治体のデータを分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度に実施した郵送自記式の全国調査では、全国の保健所における業務研究への取り組み実態を明らかにした。 平成25年度は、業務研究サポートモデルを開発する上でさらに詳細な調査が必要と判断し、継続的に業務研究に取り組んでいる5保健所(県型保健所2ヵ所、政令指定都市1ヵ所、中核市2ヵ所)の保健師業務を統括する立場にある保健師および業務研究を推進する上で責任のある立場の保健師へのインタビュー調査を実施した。 平成26年度は前年度の5保健所の調査から調査資料をまとめ、その資料を提示しつつ、新たに5ヵ所の県型保健所への調査を実施した。業務研究を推進していくには、業務の改善とともに人材育成という目的に向け、主担当者の問題認識や熱意、同僚職員による業務研究への直接的なアドバイス、リーダー保健師の主担当者や管理者への関わりといった業務研究への積極的な取り組み姿勢が抽出された。保健所長の業務研究の必要性の明確な認識の元、保健所内で業務研究を検討できる場が確保されている、業務研究を報告書にまとめるといったルールがある等の保健所が研究機関であるという職場風土があることが捉えられていた。さらに県本庁が県レベルの身近な発表の場を設定し、情報交換を図ることができること、大学教員等の外部の研究者による業務研究へのサポートがあることといった、体制づくりにおける保健所外の条件が明らかとなった。 そして、平成26年度は計画書のとおり、平成25年度に続き、保健師の業務研究への取り組みを教育研究機関の研究者が支援する中で、保健師が所属する組織の支援体制の充実を含む業務研究サポートモデルの開発に資する要因を明らかにするために、5ヵ所の自治体で研究支援を実施した。平成25年度に実施した3ヵ所の自治体と合わせ、計8ヵ所の自治体におけるインタビューデータから、業務研究を推進する上で有益だった条件に関し分析中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成25年度および平成26年度に実施してきた、継続的に業務研究に取り組んでいる10ヵ所の保健所の保健師業務を統括する立場にある保健師へのインタビュー調査の知見と、8ヵ所の自治体において、研究班メンバーが実際に業務研究支援を実施する中で得られた知見から、班会議での協議と今までの研究参加者のメンバーチェックから業務研究サポートモデルを開発する。具体的には、継続的に業務研究に取り組んでいる10ヵ所の保健所の調査より、リーダー的な立場の保健師が有すべき条件について明らかにし、8ヵ所の自治体において実施した業務研究支援のインタビューデータから主担当者や自治体の有すべき条件について明らかにした後、研究代表者が業務研究サポートモデル原案を作成する。さらに、その原案を研究班で検討し、原案から業務研究サポートモデル案とする。そして、この案を、継続的に業務研究に取り組んでいる10ヵ所の保健所のリーダー的な立場の保健師および、業務研究支援を実施した自治体における研究参加者に提示し、妥当性、活用可能性からのメンバーチェックにより検証し、業務研究サポートモデルを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に実施した業務研究支援であるが、研究参加者が学会或いは研究会でのいずれかの場での発表後に最終データを収集することとしていたため、研究参加者の発表が年度末になってしまった自治体でのデータ収集が平成27年度となり、進捗が遅れる結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、研究班内での検討および研究参加者のメンバーチェックにより業務研究サポートモデルを開発し、報告書としてまとめ、研究参加者へ報告し、国内外の学会にて公表していく。
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