本研究は、研究者による「がんと認知症をともに持つ高齢者に対する緩和ケア評価指標」に基づき、看護職を対象とした教育プログラムおよび教材を作成し、その有用性を検討することを目的とした。 がんと認知症をともに持つ高齢者に対する緩和ケア評価指標は、7 の大項目(①信頼関係を築くコミュニケーション、②個人史をふまえた対象理解、③全人的ヘルスアセスメントに基づく安楽の提供、④倫理的な看護ケア、⑤家族を含めた高齢者ケア、⑥安心できる場づくり、⑦チームアプローチ)を軸とする。本教育プログラムは、この7つの視点から、目的・対象・場・学習時間に応じた教材およびプログラムを作成し、検討を繰り返した。特に、認知症かつがんである高齢者の体験世界の理解に近づくために、インタラクティブな学習法を工夫し、ロールプレイ、視聴覚教材、物語制作学習、ケアリングと倫理、そして、痛み、栄養、せん妄などの症状マネジメントを含め、学習内容を洗練した。認知症ケア(パーソン・センタード・ケア、ユマニチュード)および緩和ケア(エンド・オブ・ライフ・ケア、宗教ケア、スピリチュアルケア)に関する教育プログラムや、ケア評価法について、国内外の研究者より情報収集を行い、プログラム全体の構成を検討した。高齢者ケア施設や地域においては、介護職との連携がケアの質向上に不可欠である。看護・介護連携を強化するため、介護職を対象とした学習教材の作成・検討も行い、チームアプローチを踏まえた「がんと認知症をともに持つ高齢者に対する緩和ケア評価指標を活用した看護師教育プログラム」を検討した。
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