研究課題/領域番号 |
24593476
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
小木曽 加奈子 岐阜大学, 医学部, 准教授 (40465860)
|
キーワード | 認知症 / BPSD / 介護老人保健施設 / ケアアウトカム / 充実感 / 職務満足度 / 離職 |
研究概要 |
調査3は、介護老人保健施設10施設に対して、1年以上認知症ケアを実践している看護職5名と介護職5名(計100名)に実施した。主な調査内容は、BPSDサポート尺度案1(2領域・4項目・5質問)であり、得られた結果から、BPSDサポート尺度案2(2領域・4項目・3質問)を抽出した。調査4は、BPSDサポート尺度案2を用いて、重み付け得点化を行った。対象者は、介護老人保健施設5施設のBPSDがある認知症高齢者が入所している認知症棟で、認知症ケアを実践しているケア実践者30名(1施設に6名)とした。AHP理論を用いた調査には、詳細な説明が必要であるため、研究者は対象者に対して、調査方法の説明と記入時の待機を行った。AHP理論に基づく重み付け得点化は、一対比例法で行い、下位尺度評価質問項目内の比較を行った。一対比較値としては、Sattyga示す方法とし、BPSDの現状としては、「1:両方の項目が同じ程度困難」「3:前者の方が後者よりやや困難」「5:前者の方が後者より困難」、「7:前者の方が後者よりもかなり困難」「9:前者の方が後者よりも絶対的に困難」とし、有効なケアに対しては困難という文言を有効に替え実施した。分析は、単純集計と簡易計算法による重みベクトルの平均値±SD及び各項目の3質問の一致率を算出した。その結果、BPSDサポート尺度案2の困難に感じる4領域BPSDは、「易怒・興奮」と「行動的攻撃(暴力)」では、重みベクトルの数値は差異がみられたが、一致率は高かった。また、よい反応を得られたケア4領域BPSDは、困難に感じる4領域BPSDと比べると一致率は低いが、重みベクトルの数値には差が少なかった。そのため、BPSDサポート尺度案2のすべての質問項目を採択して、平成26年度は調査5を進めることとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画である調査1-1、調査1-2、調査2は、予定通り終了することができた。また、平成25年度の研究計画である調査3、調査4は、予定通り終了することができた。これらの調査を実施することで、本研究の目的である認知症高齢者の対応困難なBPSDの具体的な現状と、その時に実施した対応でよい反応を得られたケアの現状が明らかになった。平成24年度の調査2のデルファイ法では、ケア実践者と研究者間での意見収束を試みたが、先行研究でも指摘されている「行動的攻撃(暴力)」では、意見収束ができなかった項目があった。ケアを行う側にも、それぞれ固有の価値観があり、今迄の学習や経験によって、事象の捉え方が異なり、見方が一様ではないことが明らかとなった。調査3においては、それらの質問項目の精選を行うことができ、調査4ではAHP理論を用いた重み付けを行った。AHP理論は、ぞれぞれ固有の価値がある事象に対して、意思決定者(ケア実践者)の心の中に立ち入って、従来の直観や経験に根差した評価を数量化することにある。BPSDの捉え方は一様ではないことはさまざまな研究により、指摘されているところではあるが、BPSDが認知症の人のケアを困難にさせている要因でもある。そのため、さまざまな見方があるものの、それらの重み付けを行うなどにより、BPSDサポート尺度の価値が高まるように作成していくことが必要である。平成26年度の更なる調査にむけて、BPSDサポート尺度案3は完成し、研究は順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度・平成25年度と研究計画を予定通り実施することができ、今後も年次ごとの研究計画に沿って実施していきたいと考える。 平成26年度は、調査5と調査6を実施する。調査5として、BPSDサポート尺度案3の信頼性を確かめるために、介護老人保健施設10施設に対して、1年以上認知症ケアを実践している看護職5名と介護職5名(計100名)に質問紙調査を実施する予定である。調査6では、介護老人保健施設において、生活全体に配慮が必要な認知症高齢者(新規あるいは再入所2日目に、Texas Tech Functional Rating Scale for the Symptom of Dementiaを用いて30点以上の利用者を対象とする) に対して、完成したBPSDサポート尺度などを用い、参加観察法及びフィールド調査を実施し、BPSDサポート尺度を指標としたケアが効果があったかどうかを検証する。認知症高齢者の変化は、Moore機能的認知症尺度などを用い測定を行う。調査6における観察者及びフィールドノート記録者は、本研究調査対象認知症フロアのケア実践者である。なお、調査6の結果により、BPSDサポート尺度の修正の可能性もある。 平成27年度は、BPSDサポート尺度を用いて、認知症ケアアウトカムと認知症ケア充実感と職務満足度及び離職意向の関係を、介護老人保健施設約200施設に対し、当該施設で認知症ケアの経験がある看護職5名と介護職5名(計約2,000人)を対象に、質問紙調査を行う予定である。調査7では、本研究課題の5つの仮説を検証する。
|