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2012 年度 実施状況報告書

ケアマネジャーの経験するモラルディストレスの解明と支援プログラムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 24593490
研究種目

基盤研究(C)

研究機関千葉県立保健医療大学

研究代表者

伊藤 隆子  千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 准教授 (10451741)

研究分担者 石垣 和子  石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (80073089)
吉田 千文  千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 教授 (80258988)
辻村 真由子  千葉大学, 看護学研究科, 講師 (30514252)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードモラルディストレス / ケアマネジャー / 支援プログラム
研究概要

本研究の目的は、先行研究にて有効性を検討したケアマネジャーへの支援プログラムを、よりモラルディストレスの概念が明確になるよう修正しその有効性の検討を行うことである。
方法:A県内の居宅介護支援事業所に所属する現職のケアマネジャーを公募し、講義およびケアマネジャーが実践の場で経験する倫理的ジレンマを含む事例をグループで検討するセッション(半日)を約3週間毎に3回行なった。5~6人のグループによる事例検討では、エコマップの作成や否定的感情の外在化を促すことで、事例提供者自身が自己の思考や感情を理解できるよう、さらにグループメンバーの豊富な経験の提示や肯定的な評価によって新たな対処行動が計画または実施されるよう研究者らがファシリテートした。第1回セッション開始前と第3回終了時に、「一般性セルフエフィカシー尺度GSES」「日本語版バーンアウト尺度BMI」「精神健康調査(日本版GHQ28)」で比較検討した。
結果:29名の参加者のうち3回とも出席した24名を分析の対象とした。内訳は女性18名、男性6名、年齢は30代5名、40代12名、50代5名、60代4名、管理・監督職15名、非管理職10、基資格は介護福祉士11名、社会福祉士5名、看護師3名、他5名であった。BMIの情緒的消耗感は、実施前13.67から実施後12.13へ有意に減少し、個人的達成感(逆転項目)は前17.29から後17.92へ上昇傾向にあった。GHQ28の身体的症状、不安と不眠、社会的活動障害、うつ傾向共に減少傾向にあり、合計点では実施前6.25から実施後5.75へと減少したが、依然精神健康度は低い値を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請者は先行研究にて、「倫理的ジレンマへの対処を促すためのケアマネジャーへの支援プログラム」を開発した。その結果、制度上課せられた決まりや役割とのジレンマを含むモラルディストレスという概念を導入する必要があることがわかったが、その解明は不十分であった。そこで本研究では、1.まずケアマネジャーの経験するモラルディストレスの概念構成を明確にし、2.それをもとに①修正版「モラルディストレスを測定する質問紙」の作成と②看護職を含めた多様な専門職を基盤とするケアマネジャーを支援し得るプログラムを再開発し、3.その有効性を検討したいと考えた。
当初、「1.看護職を含む多様な専門職を基盤に持つケアマネジャーの経験するモラルディストレスの概念構成を明確にする」目的で、1)国内外の在宅ケアにおける倫理的課題やモラルディストレスに関連する文献レビューを、看護・保健の分野に限らず、社会福祉系、介護福祉系も実施する。2)多様な専門職を基盤にもつケアマネジャー(看護師、保健師、社会福祉士、介護福祉士等)に対して半構成的インタビューを行う。①国内の専門誌などから地域包括支援センター、居宅介護支援事業所のエキスパートケアマネジャーを厳選する。②選出されたエキスパートケアマネジャーの居住する地域へ出向き、半構成的インタビューを行う。以上のことを計画したが、前年度に行った支援プログラムを、再度実施してほしいという要望があったため、支援プログラムの実施を優先した。

今後の研究の推進方策

この「支援プログラム」は、支援を必要としているケアマネジャーを対象とし、グループワークによる事例検討を行い、ケアマネジャーが実践の現場で経験するモラルディストレスを含む場面を言語化し、エコマップにより視覚化し、価値の対立を明確化し、実現可能な行動計画を立てて行くという形態をとる。研究者は、グループワークにおいてファシリテーターの役割を担う。ファシリテーターは、参加者がグループ内で何を言っても評価されることなく、自由に意見を述べることを保障するような雰囲気づくりをし、参加者の経験した事例に関連する気持ち・考えの言語化を促すことを行う。すなわち1.ジレンマの経験に伴う否定的感情の外在化を促し、客観的に吟味できるよう促す。2.ケアマネジャー自身の価値観への自己覚知を促す。3.利用者や家族等の価値観を認識し、内在化できるよう促す。4.ケアマネジャー自身がすでに保持している複数の対処行動計画を肯定的に評価する。5.さらなる新たな対処行動を提案する(Gメンバーの意見も聞く)。6.行動した結果は利用者にとってどのような意味をもたらしたのかを共に考える(行動する結果はどのような意味をもたらすかを共に考える)。ことを行うものである。
しかし、複数存在するファシリテーターの質を確保するのが課題となっている。そのため今年度は、グループワークの音声録音を逐語録にし、その内容を分析することで、参加者の職種ごとに、「どのような価値観や信念のもとケアマネジメントを実践しているか」「どのような倫理的課題やモラルディストレスを経験しているのか」に焦点を当て、各職種間の類似点と相違点を見極めるよう分析をすすめる予定である。明らかにしようとしているモラルディストレスの概念化にあたっては、質的研究の経験のある複数の研究者と協議をしつつ進めたいと考えている。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額42,393円の理由は、研究分担者石垣和子の研究会参加と支援プログラムへの参加が困難であったためである。また平成24年度に実施した支援プログラムでは、1セッション3グループのプログラムを3回実施した。その際の音声録音120分×3G×3回分の文字起こし分313千円(1180分×290円/分)は、研究費の残額が足りず業者委託できなかった。
平成25年度は、その音声データ文字起こしを業者に委託し分析をすすめ、ケアマネジャーの経験するモラルディストレスの概念構成を明確にし、先行研究からの懸案である「モラルディストレスを測定する質問紙」の修正を行う。そのための研究会議の交通費127千円、国内学会での発表と知見の収集のための交通費80千円、計207千円と、人件費・謝金として文字起こし313千円、データ整理のための研究補助員雇い入れ342千円(時給950円×6時間×60日分)、文献取り寄せ費用および書籍費100千円、消耗品80千円、計1,042千円が必要である。
平成26年度については、修正版「モラルディストレスを測定する質問紙」を使用し層化比例抽出による全国1000事業所を対象とした郵送による無記名自記式調査を実施し妥当性を検討する。謝金として資料整理のための研究補助員の雇入れ57千円(時給950円×6時間×10日分)、その他として調査用紙20千円、印刷費50千円、通信費194千円が必要である。さらに看護職を含めた多様な専門職を基盤とするケアマネジャーを支援するプログラムを実施しその有効性を検討する。そのために交通費269千円、支援プログラム参加者への研究協力謝金360千円(9,000円×40人)、文字起こし313千円、データ整理のための研究補助員雇い入れ342千円、ファシリテーター謝金45千円、研究への参加者公募のための通信費150千円が必要である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 在宅ケアにおける倫理的ジレンマへの対処を促す支援プログラムの開発と有効性の検討2012

    • 著者名/発表者名
      伊藤隆子、亀井縁、辻村真由子、雨宮有子、吉田千文
    • 学会等名
      第32回日本看護科学学会学術集会
    • 発表場所
      日本看護科学学会
    • 年月日
      20121130-20121201

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公開日: 2014-07-24  

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