研究実績の概要 |
平成24年度より実施した郵送質問紙調査(第1次調査),来場足部機能健診調査(第2次調査)の結果から,①足部痛による能力障害(Disabling Foot Pain;以下DFP)の評価指標であるManchester Foot Pain & Disability Index(以下MFPDI)日本語版の計量心理学的検証,②地域在住高齢者における足部痛ならびにDFPの有症率,関連因子の分析,③地域在住高齢者コホートの8か月間の追跡期間中における足部痛・DFPの発生率と関連因子の分析を実施した. ①MFPDI日本語版の信頼性(内的整合性)はCronbachのαが0.94,項目-合計相関係数が0.51~0.77と高い内的整合性が確認できた.また因子分析(一般化最小二乗法/直接オブリミン回転)で構成概念妥当性を検証し,カイザーガットマン基準とスクリープット基準により第3因子(第1因子;機能制限,第2因子;疼痛重症度,第3因子;外観への懸念と命名)までが有効であった.この因子構造はMFPDI原著版の因子構造と完全に一致し,英語版尺度との言語比較に耐えうることが確認できた. ②日本語版MFPDIを用いて判定した日本人高齢者におけるDFPの推計有症率は19.8%(男性15.9%,女性24.6%)で,わが国の推計有症者数は557万4900人に上ることがわかった.また足部痛のある高齢者は重症度に関わらず9割がDFPを発症し,DFP関連因子では筋骨格系障害(腰痛,足部足関節可動域制限等)以外に,痛風が強く関連していることが明らかとなった. ③第1次調査以降8か月間で330人の高齢者を追跡.足部痛発症率は24.5%/年、DFP発症率は24.3%/年であった.先行研究でDFPの危険因子とされてきた女性,過体重の関連は確認できなかった一方で,転倒歴,腰痛・膝痛,足部感覚異常,足部末梢血行不良,足趾関節可動域制限,足趾変形,足関節症,胼胝・胼胝,外反母趾はDFP発生との関連が示唆された.これらの結果は国内外で報告された同様の先行研究の結果と一部矛盾するため,さらなる精査が求められる.
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