研究課題/領域番号 |
24593496
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
小松 万喜子 愛知県立大学, 看護学部, 教授 (50170163)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スピリチュアルケア / 福祉専門職 / 看護専門職 / 高齢者 / 終末期 / 学習ニーズ / 教育ニーズ |
研究概要 |
高齢者が人生の終末をその人らしく生き、平安な死を迎えるためにはスピリチュアルケアが重要である。本年度は、①高齢者ケアに携わる看護・介護職者のスピリチュアルケアに関する学習ニーズ、②看護・介護職者を育成する教員の高齢者へのスピリチュアルケア教育に関する意識と教育の現状を明らかにするための全国調査に向けて、[福祉・介護職者の教育の背景と求められる人材像の分析]と[社会福祉士・介護福祉士教育のテキスト分析]を行った。これらは、ケア提供者である福祉職の学習ニーズ、教員の教育ニーズに関する調査項目を精選するために必要であった(研究者は看護教員であるため、特に福祉・介護職者の教育背景の分析に重点をおいた)。 最初に、「社会福祉士及び介護福祉士法」の現在までの度重なる改正の経過を、高齢者の終末期ケアの位置づけに焦点をあてて詳細に分析した。介護福祉士の業務は昭和62年創設時の「入浴、排せつ、食事その他の介護」から、平成19年に「心身の状況に応じた介護」に改正された。これは多様化・高度化する介護・福祉ニーズに応じた改正であり、介護福祉士の業務に終末期にある人の介護が位置づけられたことを示す。また、「社会福祉士介護福祉士養成施設指定規則」の改正経過を分析したところ、教育内容にこの法改正が反映されていた。さらに厚生労働省は平成20年の「社会福祉士養成施設及び介護福祉士養成施設の設置及び運営に係る指針」により、社会福祉士の教育内容に「終末期ケアの在り方」、介護福祉士の教育内容に「死にゆく人のこころとからだのしくみ」「終末期の介護」を明示した。次に、これらの実際の教育への反映状況を確認するためにテキスト分析を行った。テキストは法改正に伴い度々改訂され、シリーズ化されたテキスト(7セット、103冊)を分析した結果、終末期ケアに関する記載はばらつきが大きく、スピリチュアルケアの記載は少なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度までの予定は、①全国調査に向けた質問紙の作成、②調査対象施設(老人福祉施設、医療・福祉系大学)のリストアップと層化抽出、③倫理審査申請までを実施することであった。現在までの達成度は、①の質問紙の調査内容の素案作成段階までである。達成が遅れた理由の一つは、質問内容の抽出・精選のために必要とされた「社会福祉士及び介護福祉士法」の改正経過と法内容の分析に時間を要したことである。しかし、この法律は、社会福祉士および介護福祉士の定義・業務を規定するものであり、福祉職の学習・教育ニードを大きく方向づけるため本研究には欠かせないプロセスであった。もう一つの理由は、教育内容・活動に関する質問内容を検討するために行ったテキスト分析に時間を要したことである。福祉職養成テキストは多種の出版物があり100冊を超えるテキスト分析は膨大な作業であった。また、福祉職養成テキストは法改正に伴い度々改訂されており、本年度中にも改訂が行われたテキストがあり、これらの内容確認に手間取った。 以上が現在までの達成度とその理由であるが、時間をかけて資料収集・分析を行った成果として、我が国の高齢者ケアの課題と政策をとらえることができ、本研究課題の「高齢者のスピリチュアルケア」が社会の要請に合致したものであることを再確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの取り組みにより、質問紙の構成内容の素案はできているため、質問紙完成を急ぎ、平成25年度前半には倫理審査を受け、後半には全国調査(本年度は在宅及び老人福祉施設で高齢者ケアに携わる看護・介護職者を対象とする調査)が実施できるように計画的に進めていく。具体的な計画と研究の推進方策は以下に示す。 [1.協力施設の選定]①各県の在宅介護支援センター、老人福祉施設のリストをインターネット等で入手して層化抽出する。②全国の医療・福祉系大学のリストを作成して層化抽出する。①②に研究補助者を雇用することにより研究の推進をはかる。 [2.質問紙の作成]①看護・介護職者の学習ニーズに関する調査用紙を作成する。②医療・福祉系大学教員のスピリチュアルケアとその教育に関する意識と教育活動を知るための調査用紙を作成する。 [3.倫理審査を受ける]倫理審査申請書の作成を急ぎ審査を受ける。 [4.高齢者ケアに携わる看護・介護職者への調査の実施]①層化抽出された施設の責任者に研究協力依頼文書を発送し、施設職員に対する調査実施の許可を得る。許可が得られた施設からは承諾書と対象者数の返送をしていただく。承諾を得られる施設が少ない場合には対象施設リストに基づいて依頼施設を追加して、調査対象数500名をめざす。②調査用紙を印刷する(業者発注により推進をはかる)。③施設に調査用紙を発送し、施設責任者から対象者に調査用紙を配布していただく。④対象者には個別に調査用紙を投函していただく。返送が少ない場合は依頼施設を随時追加して対応する。①~④の発送・回答の整理は研究補助者に依頼して円滑に進める。 [5.回答のデータ入力及び分析]①返送された調査用紙はコード番号を付け、有効回答を判別してデータ入力を行う。入力は業者または研究補助者に依頼して効率よくおこなう。②統計ソフトを用いて統計的分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度までの研究費はほぼ計画通りに使用したが、調査準備での研究補助者依頼業務が少なかったことと、図書館間貸借システムの利用により書籍購入費用が少なくなったため、次年度に使用できる研究費が生じた。この研究費は、調査用紙の封入などの調査準備、発送作業、回答の整理・データ入力などを円滑に行うための研究補助者の雇用にあてていく予定である。 次年度の研究費の使用計画は、物品費690千円(質問紙調査にかかる費用など)、旅費134千円程度(学会:旭川、秋田ほか)、謝金180千円程度(調査準備およびデータ整理・入力作業などの研究補助者)、その他260千円程度(印刷業者への発注等を含む)を予定している。
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