研究課題/領域番号 |
24593496
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
小松 万喜子 愛知県立大学, 看護学部, 教授 (50170163)
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キーワード | スピリチュアルケア / 福祉専門職 / 看護専門職 / 高齢者 / 終末期 / 学習ニーズ |
研究概要 |
本研究の目的は、高齢者が人生の終末をその人らしく生き、平安な死を迎えるために重要なスピリチュアルケアに関する医療・福祉専門職者の教育の現状と課題を明らかにし、高齢者のスピリチュアルケアの向上に資する教育システムを検討することである。昨年度は、高齢者ケアに携わる看護・介護職者と、看護・介護職者を育成する教員を対象とした全国調査に向けて、「社会福祉士及び介護福祉士法」の現在までの改正経過を、高齢者の終末期ケアに焦点をあてて分析した。さらに、社会福祉士・介護福祉士教育のテキスト(103冊)を分析した。その結果、終末期ケアに関する記載の内容と量にはばらつきがあり、スピリチュアルケアの記載は少ないことが確認された。これらの分析は教育の現状と傾向を明らかにするために重要なものであり、またこの結果から導いた要素は質問紙の枠組みとなるため、本年度は、最初にこのテキスト分析の信用性を確認する目的で、質的研究の経験がある研究者にデータ抽出およびカテゴリー化を依頼し、昨年度の分析結果と不一致がみられた部分については一致するまで協議した。また、現状の福祉系テキストにはスピリチュアルケアの内容が少なかったため、質問項目の構成を補完する目的で、看護系テキストの終末期ケア・スピリチュアルケアの掲載内容についてもテキスト分析し、これと照合して不足内容を加えて質問紙の完成をめざした。現在はこの質問紙の内容的妥当性を確認するために、福祉専門職者の教育に従事し高齢者福祉を専門とする教員に検討を依頼中である。これらの取り組みと平行して、各県の在宅介護支援センター・老人福祉施設、全国の医療・福祉系大学をインターネット等を活用してリストアップし、調査対象施設の層化抽出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、質問紙の完成と、全国調査の対象施設の選定、倫理審査受審、高齢者ケアに携わる看護・介護職者への調査の実施までを行う予定であった。このうち、質問紙はほぼ完成し、全国調査の対象施設の選定までは達成したが、調査は実施できなかった。遅れた理由の1つは、テキスト分析の信用性を確保するための手続きを追加して、他の研究者に改めてテキスト分析を依頼して一致状況の確認と協議を行ったためである。103冊から得たデータ分析であるため物理的に時間を要した。2つ目の理由は、福祉系テキストの分析結果のみから質問紙を構成することによる偏りを補完するために、看護系テキストの分析とその結果の福祉系テキストとの照合の手順を追加したことである。3つ目の理由は、全国の在宅介護支援センター・老人福祉施設、医療・福祉系大学のリスト入手が容易でなく、インターネット等を駆使しなければならなかったことと、特に大学においては福祉系学部の設置状況などの確認に手間取ったことである。
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今後の研究の推進方策 |
質問紙を完成させ倫理審査を受け、全国調査を実施する。当初計画では、平成25年度に「在宅及び老人福祉施設で高齢者ケアに携わる看護・介護職者を対象とする調査」を行い、平成26年度に「高齢者ケアの教育に携わる医療・福祉系大学教員を対象とする調査」を行う計画であったが、平成25年度の計画が遅れたため、平成26年度に両対象者の調査を実施できるように、研究補助者を確保して取り組む。調査は以下の手順で進める。 [高齢者ケアに携わる看護・介護職者および教員を対象とする調査の実施]①層化抽出された施設の責任者に研究協力依頼文書を発送し、施設職員に対する調査実施の許可を得る。許可が得られた施設からは承諾書と対象者数の返送をしていただく。承諾を得られる施設が少ない場合には対象施設リストに基づいて依頼施設を追加する。②調査用紙を印刷する(業者発注により推進をはかる)。③施設に調査用紙を発送し、施設責任者から対象者に調査用紙を配布していただく。④対象者には個別に調査用紙を投函していただく。①~④の発送・回答の整理は研究補助者に依頼して円滑に進める。 [回答のデータ入力及び分析]①返送された調査用紙はコード番号を付け、有効回答を判別してデータ入力を行う。入力は業者または研究補助者に依頼して効率よくおこなう。②統計ソフトを用いて統計的分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、計画していた「在宅及び老人福祉施設で高齢者ケアに携わる看護・介護職者を対象とする全国調査」を実施しなかったため、調査費用として申請していた物品費、謝金(調査準備およびデータ整理・入力作業などの研究補助者)、印刷費用、郵送費用について、次年度使用額が生じた。 次年度は、昨年度予定していた「在宅及び老人福祉施設で高齢者ケアに携わる看護・介護職者を対象とする調査」と「医療・福祉系大学で高齢者ケアの教育を担当している教員を対象とする調査」をあわせて行う。これらの実施をふまえて、物品費600千円(質問紙調査にかかる費用など)、旅費200千円程度(学会・研究会:大分、札幌、神戸ほか)、謝金200千円程度(調査準備およびデータ整理・入力作業などの研究補助者)、その他290千円程度(印刷業者への発注等を含む)を使用する計画である。
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