本研究の目的は、高齢者が最期まで人生の意味を見失うことなく生きることができるように支援するために、老人福祉施設及び在宅においてケアに携わる看護職・福祉職のスピリチュアルケア教育のあり方を検討することである。平成24~26年度は、看護職と福祉職の基礎教育で用いられているテキストの分析と、看護職・福祉職の教育に携わる教員の意見聴取により、終末期ケアに関する教育内容30項目を精選し質問紙を作成し、平成27年度には全国調査(訪問看護ステーション・訪問介護事業所・特別養護老人ホーム:各2000施設を層化抽出、完成年度後の看護大学195校、介護・社会福祉士養成大学226校)を実施した。1464名(看護職627、福祉職743、看護教員53、福祉教員41)から有効回答を得た。スピリチュアルケアについて「学校で学んだ」ものは看護職19.9%、福祉職15.3%と少なく、「自分で学んだ」ものが50%を超えていた。30項目の教育内容のうち、「学校で教育が必要」とした看護職・福祉職が70%を超えた項目は21項目と多く、50%未満であったのは「看取り介護加算などの算定基準」のみであった。学校での教育ニーズが高かった上位10項目の、実際の教育状況をみると、スピリチュアルペインの意味、高齢者のスピリチュアルケアの目的、の2項目の教育実施率が低かった。全体の教育実施率が50%未満であったのは、遺体の変化、死者儀礼、スピリチュアルペインの把握方法、スピリチュアルペインの軽減方法など8項目であったが、これらを「学校で教育が必要」とする看護職・福祉職は70.4%、66.4%、72.3%、71.7%と多かった。この不一致には看取りの場の急速な変化、教育内容の専門性、教育時間の限界等が関連している可能性があり、実践現場の学習ニーズの変化に対応して、質の高いケア提供を支援する教育のあり方を再考する必要性が示唆された。
|