研究実績の概要 |
うつ病(大うつ病性障害)は長期にわたり患うことが多く、そのため家族や社会、仕事に多くの深刻な影響を与えることが知られている。さらに精神疾患は、療養の長期化やスティグマなどの問題から、家族の心理的社会的負担も重いことが明らかになっている。うつ病においても、家族の余暇活動が制限されたり、収入が落ち、夫婦関係が壊れるなどの深刻な影響があると報告されており、われわれの先行研究でも、うつ病患者家族の精神的健康度(K6で評価)は、平均8.6(SD=5.4, n=32)であり、これは一般人口の平均3.5(SD=3.8)に比較して大幅に悪い状態であった。精神疾患患者家族の負担軽減および患者の再発予防の方法としては、家族心理教育がある。統合失調症患者の家族心理教育の再発予防効果については、多くの研究が積み上げられており世界的に確立している。 本研究では、難治性うつ病患者の家族へ複合家族心理教育を行うことで、それを行わない家族と比較して、家族の心理社会的負担が軽減するかどうかを検証することを目的として研究を行った。 介入群を、家族心理教育を施行した者と設定し、対照群を看護師による1回の情報提供を受けたものとして、無作為化比較試験を行う。結果として、8週間後、16週間後・32週間後の家族の精神的健康度、介護負担度、感情表出、うつ症状と患者のうつ症状、生活の質、家族機能の変化量を測定した。 平成28年にはすべての介入とフォローアップが終了したので、データを解析した。結果は、プライマリーアウトカムの家族の精神的健康度は有意差がなかったが、探索的に検討したセカンダリーアウトカムにおいて、いくつかの改善傾向が見られた。具体的には家族のうつ症状、家族機能である。結果は、学会シンポジウムで発表した。また英文論文を作成し、現在、投稿準備中である。
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