統合失調症をもつ人は、睡眠問題が生じやすく、それが病状や地域生活・社会参加に影響するため、睡眠と生活リズムの安定を図るケアが重要である。本研究は、地域で生活する統合失調症をもつ人を対象として、「睡眠衛生」の視点を軸に認知行動アプローチを用いて、主体的に睡眠と生活リズムの改善を図るセルフマネジメントのための援助を行い、その有効性を検討するものである。 先行研究及び精神疾患をもつ人の睡眠の満足度とニーズに関するインタビュー調査をふまえて介入プログラムの検討を行い、小集団を対象とした援助介入を行った。 援助介入は、精神科デイケアにおける小グループでの週1回6週間の睡眠改善プログラムである。内容は、1-2週は睡眠日誌と質問紙による睡眠状態と生活習慣の評価、2-6週は生活習慣改善目標の設定と実践を行い、実施状況を確認・共有し、併せて睡眠やリラックス法に関するミニレクチャーを行った。評価は睡眠状態と生活習慣をプログラム前後で比較した。 参加者は10名、年齢は38-64歳。介入前後の比較において、グループの平均値に統計的な有意差はみられなかった。しかし個別にみると、睡眠時間6時間未満の1名と9時間以上の3名のうち2名が6-9時間となり、睡眠効率は60-80%の1名を含め全員が80%以上に、不眠度は中等度2名が軽度に、日中の眠気は改善2名、増強5名、熟眠度は60%未満の2名が改善し全員60%以上となった。 対象者数は少ないが、睡眠指標の変化から睡眠状態が悪い者に改善がみられ、プログラムの有効性が示唆された。しかし、行動目標の達成と睡眠指標の変化との関連は認めにくく、正しい知識の習得や実践状況の共有によって行動目標以外の部分で睡眠に対する認識や生活習慣の変化が生じたと考えられたことから、効果的な行動目標の設定方法の検討が課題である。
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