研究課題/領域番号 |
24593517
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研究機関 | 大分県立看護科学大学 |
研究代表者 |
小野 美喜 大分県立看護科学大学, 看護学部, 教授 (20316194)
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キーワード | 介護老人保健施設 / 特定行為 / 看護介入 / チームアプローチ |
研究概要 |
本研究は、介護老人保健施設での主体的な看護介入モデルを構築するための基礎的研究を行うものである。昨年度は、介護老人保健施設で主体的な看護介入を行うモデルとして、特定行為を実施することができる看護師*(*平成23年度厚生労働省の特定看護師(仮称)業務試行事業によって導入された看護師であり、特定行為を行うスキルを習得するため大学院や研修機関で養成されている。政策自体は「特定行為に係る看護師の研修制度案」として平成26年2月に閣議決定された)を含むチームアプローチを展開している施設にて、参加観察を行い活動の実際を調査した。 平成25年度は対象施設を増やした追加調査をしていく予定であった。しかし、上記看護師が勤務する施設の増加がなかったため、計画を変更し次の2点を実施した。 ①前年度に実施した対象施設のフィールド調査結果を質的に分析し、介護老人保健施設で特定行為を行う看護師の活動内容を明確にした。結果は「介護老人保健施設における特定看護師の活動プロセスの分析」をテーマとして、第2回日本NP協議会研究会(平成25年11月 東京都)で研究発表した。詳細な内容は投稿に向けて論文を作成中である。 ②対象施設の主体的看護介入の有用性を検討するために、施設で協働する多職種が認識する有用性について意識調査を行った。調査対象は特定行為のできる看護師と共に働く他看護師、医師、介護士、理学療法士など高齢者の直接的ケアに関わる職種であり、方法はアンケート調査である。調査内容は特定看護師との協働により、チームがどのような成果をもたらしているか、その認識を問うものとした。調査は対象施設と同一地域を拠点とする施設を対照群として設け、比較を行った。これにより主体的看護介入のアウトカムが多職種の視点で明確になり、看護介入の有用性を確認することができた。この結果についても論文投稿の方向で準備をすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に対象施設となった1つのモデルなりうる介護老人保健施設にて、主体的な看護介入についてフィールド調査を行った。分析に時間を要したが、対象施設の看護介入の概要について結果をまとめることができた。看護介入の普遍性を出していくためには、複数の介護老人保健施設での主体的な看護介入のバリ―ションを調査対象にデータ収集していく必要がある。しかし、実際には調査条件に見合う対象施設数が昨年度は増えることがなかったので計画を変更した。今回の研究は、全国的に希少であることを前提にしたケースモデルとして研究の方向性を転換する必要が生じた。その方向性にそって平成25年度は研究方法を修正し(上記記載)、希少施設のケースモデルとして、多職種に意識された介入のアウトカムを分析できるように調査を行った。調査は計画どおりに年度内に終了し、主体的な看護介入によって入所者の緊急時の対応等に効果が認識されていることがわかり、学会発表を行った。変更した計画上は順調に進んでいる。 ただし、今回のテーマである「主体的看護介入」のモデルとなる特定行為ができる看護師を含めたチームが、高齢者施設に増えないことは、本研究とは別の観点で超高齢社会を背景とする日本の地域医療上の課題であるといえ、今後別途検討が必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、引き続き全国で唯一の対象施設である介護老人保健施設で、高齢者に特徴的な症状への看護介入に焦点化した調査を行う。平成24年度のフィールド調査では、高齢者に特徴的な症状や病態として、糖尿病、尿路感染症、心不全等の循環不全等が多く見られた。これらのケースには急変時対応や日常的な医療行為とともに医療コストも必要となっている。これらの症例は施設特有ではなく全国的にも高齢者に多いと報告されている。そのため、糖尿病、尿路感染症、心不全の症例に着目して、ケースへの看護介入について経過をおってデータ収集し、分析することとする。つまり、看護師を含むチームアプローチが各症例に対してどのように行われ、どのような経過をもたらすのかをケース分析する。具体的には、各症状をもつ複数のケースを一定期間継続的にデータ収集する。症例のデータとして高齢者の身体的データ、心理社会データ等の推移を考えている。およびその症例への看護介入をデータ収集する。 このようなデータ収集とともに海外文献(Nursing Homeでの介入に関する研究論文)を収集し、介護老人保健施設での看護介入と海外文献を比較し検討することで、日本の特定行為を実施する看護師を含むチームアプローチの介入モデルの基礎とすることができると考えている。 この症例に着目した看護介入の分析は、単年では十分な結果の反映はできないことが予測され、今後の継続研究も視野に入れて今年度の研究を進めていくこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の調査計画は、主体的看護介入となりうる特定行為を行う看護師を含むチームが活動する施設を広域に対象施設を増やし、データ収集をする計画であった。しかし、対象となる施設の増加が実質的になかったため、複数施設の追加調査ができなったことが、旅費や人件費等の研究費を計画的に執行できなかった理由である。 平成26年度は現状に即して研究計画を修正し、現在、主体的看護介入となりうる特定行為を行う看護師を含むチームが活動する1施設を。希少なモデルケースとしてとらえ、高齢者に特徴的ないくつかの症状に対する介入について具体的に調査を行うこととした。 主体的看護介入となりうる特定行為を行う看護師を含むチームの活動をデータ収集するために複数日の参加観察およびインタビューを行う。そのために必要な物品費(デジタルビデオカメラ、ICレコーダー等)や人件費・謝金(およそ4名×5000円×5日分)の支出を予定している。また、すでにデータ収集を終えた昨年度までの調査結果を外部に公表する予定である。これに必要な旅費(日本看護科学学会(名古屋・大分間)、日本NP協議会研究会(東京・大分間)等の支出が必要である。さらに論文投稿に必要な英文校正などの費用の支出を予定している。 また、今年度が本研究課題の最終年となっており、協力施設や関係施設等への研究の報告等に係る印刷費、報告に必要な旅費等を使用する計画である。
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