本研究の目的は維持期における脳血管障害後遺症による片麻痺者の再発症予防に必須の血管機能の劣化を可能な限り緩徐にするための活動・休養・睡眠への介入効果を明らかにすることであった。 1)発症から2年以上経過した脳血管障害後遺症による片麻痺者の左右上下肢の脈波伝搬速度(PWV)および下肢静脈還流機能(VRT)の6時間ごとの日内変動値を調べた結果、PWVはいわゆる血圧の日内変動に近似する型と近似しない型に分類できることが判明し、血圧近似型では収縮期血圧に近似する傾向が認められた。また変動幅は個人差が認められるが、変動幅は収縮期血圧の日内変動レンジの10倍程度と推定された。VRTは6時間おきの変動傾向を認めなかった。 2)PWVにおいて日内変動値から代表値を求め、1週間の身体活動強度と持続時間、睡眠時間と睡眠時体動量との相関と効果量を求めた結果、血圧の日内変動近似型では、起床より2時間以内にピークが認められ、非近似型では日内変動よりも安静・休養直後の活動が明らかな場合、活動直後にピークが出現する傾向が認められた。 3)PWVの悪化度抑制効果は8週間時点での中間解析の結果、有意な「睡眠時体動および下肢筋量および体幹筋量の組み合わせ要因」がPWVとの関連性を認めた。この時点で、活動・休養・睡眠時間の配分の違い(活動時間配分の比)によるPWVの効果を上回る、「睡眠時体動および下肢筋量および体幹筋量の組み合わせ要因」の効果を認めた。特に、睡眠度S2-3期の体動量(身体活動量)と体幹筋量は、8週間時点においてPWVへの影響が大きいことが示唆された。高齢片麻痺者におけるPWVの悪化度の抑制には活動・休養・睡眠時間の配分において、睡眠時の体動の出現頻度、持続時間の評価に加え、適切な体動環境とエルゴノミクスを考慮する必要性が示唆された。
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